抄録
マグネシウムシリサイド系熱電材料Mg2X (X=Si, Ge, Sn)は、原料が安価で高性能な熱電変換材料として注目を集めている。しかし、Mg2X の熱電性能は高温での酸化や揮発により劣化することから、大気中、中高温度域でMg2X系熱電材料を使用することはできない。Mg2X系熱電材料の実用化のためには、その酸化メカニズムの解明や酸化を抑制するための耐酸化膜などの検討が必要と考えられる。鉄ケイ化物は耐酸化性良好な熱電材料として知られており、酸化防止用の被覆膜としても有望であると考えられる。本研究では、マグネシウムシリサイド系熱電材料上への耐酸化膜の検討として、スパッタリング法による鉄ケイ化物膜の作製を行い、マグネシウムシリサイド系熱電材料の酸化抑制効果について詳細に検討を行った。鉄ケイ化物の膜厚が0.7ミクロンとなる400W、15分間のスパッタリング条件では膜の剥離が観測されなかった。鉄ケイ化物膜をスパッタしたMg2Si焼結体は、873 Kで3 h熱処理しても酸化が認めらないことが分かった。