抄録
骨修復材料を目指しケイ素を含有させたリン酸三カルシウムの合成条件を検討した。酸化カルシウム、オルトリン酸水溶液、シリコンアセテート、超純水を出発試料として用いて、モル比をCa/ (P + Si)=1.5、Si/ (P + Si)=0.125に設定し、攪拌中のpHを6.00-8.50の種々のpHにコントロールしながら、湿式法により試料を調製した。調製した試料を90 ℃、12 h乾燥後、1100 ℃または1250 ℃で3 h大気中で加熱し、試料の結晶相を粉末X線回折(XRD)で同定した。高いpHで調製した試料は転移温度が下がっていることがわかった。これはケイ素がTCPに固溶したためと考えられ、pHを高くするほどケイ素がα-TCPに多く固溶したと考えられる。pH7.00-8.00の条件で得られた試料を1250 ℃で焼成すると1100 ℃で存在したHAは分解して、わずかなCaSiO3相が検出されるもののほぼα-TCPとなった。しかしpHが8より大きくなると、1250 ℃で焼成しても、HA が分解されずに存在した。よってpH7.75-8.00の条件で試料を作製することが最適であることがわかった。