抄録
【緒言】酸化スズ(IV)は酸化物半導体化学センサ材料として多用さ
れている物質である。 通常、化学センサとしては、ナノ粒子に様々
な増活元素を加えて使用されている。しかしながら、化学センサ特
性に及ぼす因子の解明は、ナノ粒子であるが故、難しい。そこで我々
は酸化スズのセンサ特性の起源を探るべく、キャラクタリゼーショ
ンが比較的容易な酸化スズ薄膜を対象とし、その表面構造・欠陥構
造とセンサ特性との関係について研究を進めている。本講演では、
この一環として、pulsed laser deposition(PLD)法により様々な基板
上に作製された酸化スズ薄膜のキャラクタリゼーションとそのセ
ンサ特性の結果について報告する。
【実験】PLD 法により、酸化スズ焼結体ペレットをターゲットと
し、様々な基板上に酸化スズ薄膜を作製した。これらの薄膜を、
XRD 法により相を同定すると共に、AFM、SEM により表面微構造
を観察した。さらに、電気的評価を行うことで半導体としての物性
を評価した。これらの薄膜のセンサ特性を評価するために、金を電
極として、様々な温度で、CO, NO2, H2 ガスに対する薄膜の電気抵
抗変化を計測した。
【結果】シリカガラスを基板とした場合、1.3×10-3 Pa の酸素分圧下、
650℃以上で薄膜を作製した場合に、ルチル型の結晶構造を有する
酸化スズ薄膜が得られた。また、700℃以上では、酸化スズの再蒸
発により薄膜は得られなかった。得られた酸化スズは、Fig.1 に示
すように、微結晶より構成され、製膜時間が長くなるに従い、粒径
が増大する傾向が得られた。Fig. 2 に、650oC で作製した酸化スズ
薄膜の350 oC におけるセンサ特性を示す。本研究で作製した酸化
スズ薄膜のセンサ特性は、H2 では抵抗が減少し、NO2 では増加す
るといったn 型半導体センサとして機能していることが確認され
たが、CO を用いた場合の変化は非常に小さなものであった。当日
は、ガスセンサ特性に影響をおよぼす各種因子について、物性評価
結果に基づき議論する。