抄録
生体骨の主成分である水酸アパタイト (Ca10(PO4)6(OH)2; HAp)と、セルロースの誘導体であり、生分解性を有する2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル(TEMPO)酸化セルロース(TOC)のナノファイバー(TOCN)を複合化させ、骨欠損部を被覆するような新規生体膜の作製を試みた。まず、TOCをミキサー等で解繊し、超音波処理することによってナノファイバー化したものを乾燥させることによって膜を作製した。その膜は優れた光透過性、柔軟性と力学的強度(引張り強度)を示した。また生体親和性を上げるため、繊維状HApまたはナノ粒状HApを複合化させた。SBFに浸漬したところ、TOCNからは存在しなかったリン酸カルシウムが観察されたがHAp添加量が増えるほど、リン酸カルシウムの析出量は減少した。このことから、リン酸カルシウムはTOCNサイトから優先的に析出することが分かった。