抄録
デラフォサイト型結晶構造を持つCuInO2はカチオンの置換ドーピングにより両極性を示す透明酸化物半導体である。これを用いたデバイス設計には電子親和力χ、イオン化ポテンシャルIp、仕事関数φが重要となる。そこで本研究では光電子分光法によりこれらの値を実測することを目的とした。CuInO2粉末はNaInO2とCuClのイオン交換により作製し、放電プラズマ焼結法により高密度焼結体を得た。得られた試料はX線回折法、紫外線光電子分光法(UPS)、逆光電子分光法により評価した。UPS測定結果からIpとφがそれぞれ5.5 eV、4.9 eVであり、報告値のバンドギャップ3.9 eVからχが1.6 eVであることが明らかとなった。