抄録
生体硬組織の無機主成分である水酸アパタイト(HAp)は結晶学的に六方晶系に属し、a面とc面という二つの結晶面がある。我々はこれまでにアパタイト単結晶ファイバーを出発物質として、a面を多く露出したHApセラミックスの作製に成功している。本研究では、このHApセラミックスのナノレベルでの配向構造を明らかにするために、高分解能透過型電子顕微鏡を用いて、その超微細構造の解析を行った。制限視野電子線回折と格子像を解析したところ、各結晶粒は結晶方位が異なるが、a面を選択的に露出しており、出発原料の時点で確認されたナノレベルの配向性がセラミックス化した後でも維持されていることが分かった。