抄録
3種類のTiプレート、粗研磨Ti (Me-Ti)、鏡研磨Ti (Mi-Ti)及びCaTiO3コーティングTiにおける、BSA (牛血清アルブミン, 等電点4.8) 及びLSZ (卵白リゾチーム, 等電点11.2)吸着量を比較した。両タンパク質とも、Me-Ti > Mi-Ti > CT-Tiの順になり、またすべてのTiプレートにおいて、LSZ吸着量がBSAより3-5倍多くなった。タンパク質の固体表面への吸着に関与する因子として、表面粗さ、表面の疎水性、タンパク質と表面の静電作用を考えた。まず、表面粗さがMe-Ti > CT-Ti > Mi-Tiの順になったことより、Me-Tiの大きな吸着量は表面積が最も大きいことに起因する。さらに、表面の疎水性はMi-Ti > Me-Ti > CT-Tiの順に小さくなり、疎水性が大きいほどタンパク質吸着量が多くなることが報告されていることにより、CT-Tiの吸着量が最も少なかったのは表面粗さより疎水性がタンパク質吸着に大きな影響を与えていることを示す。さらに、すべてのTiプレートにおいてLSZ吸着量がBSAより3-5倍多くなった要因として、正電荷を持つLSZが負電荷を持つ表面により優先的に吸着することが考えられる。