抄録
Alを含む耐熱合金は,高温構造部材として高い実績を有する.これは,合金表面に形成するAl2O3スケールが酸化に対する保護膜として機能するためである.しかし,さらなる耐久性の向上を図るためには,スケール中の結晶粒界を介した物質移動(酸素の内方向拡散,Alの外方向拡散)を積極的に抑制する必要がある.我々は,Al2O3スケール環境を模擬して,多結晶Al2O3薄板を高温の酸素ポテンシャル勾配下(PO2)に曝し,PO2方向の酸素とAlの粒界拡散性に及ぼすドーパントの効果を評価・解析してきた.その結果,薄板全体にLuを粒界偏析させた場合,酸素の粒界拡散を効果的に抑制することができるが,Alの移動に対してはほとんど効果がないこと等を明らかにした1) .本研究では,LuをAl2O3薄板表面に濃化させた場合の酸素遮蔽性について評価・解析すると共に,薄板全体に粒界偏析させた場合1)と比較することで,微量元素の機能について考察した.