抄録
窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスは優れた機械的特性を活かして構造材料として応用されている。絶縁性もSi3N4セラミックスの特徴ではあるが、用途によっては導電性が要求される。Si3N4セラミックスに導電性を付与するために、高い電気伝導率を有する高アスペクト比のナノ粒子であるCNTをSi3N4セラミックスに分散させる研究を行ってきたが、CNT添加量や焼成温度などの影響は解明されていない。そこで本研究では、添加量および焼結温度を変えてCNT分散Si3N4セラミックスを作製し、これらのプロセス因子が電気的・機械的特性に及ぼす影響を検討することを目的とした。直径が60nm、長さが6μmの多層カーボンナノチューブ、Si3N4および焼結助剤としてY2O3、Al2O3、AlN およびTiO2を湿式混合した。バインダーを添加して調製した造粒粉末を50MPaで一軸成形し、200MPaでCIP成形して成形体を作製した。脱脂後、焼成温度1700~1800℃、保持時間2h、0.9MPa N2雰囲気の条件でガス圧焼結した。さらに、温度1700℃、保持時間1h、100MPa N2雰囲気の条件でHIP処理を施した。得られた焼結体に対して、密度、導電率、炭素量、ラマンスペクトルの測定、微構造観察、構成相の同定を行った。0.5wt%のCNTを添加した試料は絶縁体であったが、CNT添加量が1wt%以上では導電性が発現した。試料の導電率は焼成温度の増加と共に増加したが、これはβ-Si3N4の粒成長で説明された。1wt%のCNTを分散した試料の曲げ強度はCNT無添加のものと同程度であった。以上より、CNT添加量と焼成温度を制御することで、導電率と高強度が両立したCNT分散Si3N4セラミックスを作製することができることが明らかとなった。