抄録
現在、蛍光ナノ粒子はバイオイメージング等の分野で応用が期待されており、さかんに研究されている。しかし、量子ドット等の蛍光ナノ粒子は、励起光である紫外光が生体組織への透過性が低く、また原料として人体に有害であるカドミウムを含んでいる点で課題も多い。これに対し、生体組織への透過性が高い近赤外光を励起光源とするアップコンバージョン(UPC)蛍光体が注目を集めている。本研究では、液相プロセスで有機溶媒中に分散可能なオレイン酸修飾UPC蛍光ナノ粒子を合成し、さらにこれを脂質膜で修飾することにより、水系溶媒に対して安定に分散可能なUPC蛍光ナノ粒子の合成を試みた。原料として各元素の塩化物を用い、有機溶媒で還流してオレイン酸修飾NaYF4:Yb/Er粒子を合成した。得られた粒子が980 nmの近赤外光で可視光の蛍光を発することを確認した。さらに、この粒子を脂質膜で被覆することで水系溶媒に安定に分散することも確認した。