抄録
BaBi1−xSbxO3 (x = 0.0 - 0.5)セラミックスを作製し,高温熱電特性に対するSb固溶効果を調べた.XRDパターンからx = 0.0~0.2では単斜晶(BaBiO3型),x = 0.3~0.5では菱面体晶(BaBi0.5Sb0.5O3型)の構造をとることがわかった.規格化した格子体積はSb濃度の増加とともに単調に減少した.これらの結果とともに結晶中でBi3+及びBi5+と共存し得るSbの価数を考慮して,Sbは5価で固溶し,一連の固溶体はBaBi3+0.5Bi5+0.5−xSb5+xO3と表されることができる.
固溶体セラミックスの電気伝導率は,x = 0.0~0.5のいずれも半導体的温度依存性を示し,活性化エネルギーはx = 0.5を除きいずれも約0.4 eVと評価された.Sb濃度の増加とともに電気伝導率は減少した.ゼーベック係数はx = 0.0~0.5のいずれも,正の値を示し温度上昇とともに値が減少する熱活性化型挙動を示した.Sb濃度の増加とともにゼーベック係数は増加した.これらの結果から,BaBi1−xSbxO3 (x = 0.0 - 0.4)における電気伝導はBi5+(6s0)とBi3+(6s2)の間の正孔ホッピングによるが,Sb5+(5s0)がBi5+(6s0)を置換固溶することで正孔(6s hole)濃度を減少させていると考えられる.出力因子はSb非固溶のBaBiO3に対して最大(500℃で約3×10−5 Wm−1K−2)を示した.