抄録
かご状構造を有するβ-パイロクロア型酸化物ATaWO6 (A=K, Rb, Cs) に注目し、かご状構造中に内包されたアルカリ金属原子Aと熱伝導率との関連を検討した。熱拡散率αの序列は全ての温度範囲でCs≥Rb>Kとなり、一般的な熱伝導理論による予測と全く反対の序列となることがわかった。内包された原子Aが小さいほどかご状構造の空隙とのサイズのミスマッチが大きくなるため、ラットリング運動が増強され、より強くフォノンを散乱するためと考えられる。KTaWO6について実測したκは、理論的な熱伝導率の下限値κminと極めてよく一致しており、この物質中ではフォノンの平均自由行程がその下限近くまで短くなっていることが示唆される。