日本セラミックス協会 年会・秋季シンポジウム 講演予稿集
2012年年会講演予稿集
セッションID: 2D02
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低温固相還元法を用いた還元型チタン酸化物ナノ粒子の合成
*辻本  吉廣冨中 悟史松下 能孝山浦 一成
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抄録
二酸化チタンを代表とするチタン酸化物群は,光触媒機能の観点から膨大な数の研究が世界中で行われている.数ある光触媒物質の中で最も注目される理由は,チタンそのものが有する豊富な資源量・高い耐食性,低い環境負荷性にある.しかし,紫外線照射下でないと光触媒特性を示さないため,紫外線領域の光をほとんど含まない自然光照射下では触媒効率が極めて低い.その欠点を補うために金属カチオンや窒素や炭素などのアニオンをTiO2にドープし可視光応答を持たせられることはよく知られている.  一方,別のアプローチとして還元型チタン酸化物TiO2-xが注目されており,可視光下においても光触媒機能を示すことが報告されている.現在の手法では導入できる酸素欠損量は限られており還元型チタン酸化物のさらなる可能性を探る上で,より強く還元された相を合成しその機能を調べることは重要である.しかしながら, 一般的に,大きな酸素欠損量を導入するためには高温の還元雰囲気が必要であり,機能の最適化に必須のナノ構造が得られないという大きな問題がある.今回,アルカリ金属水素化物を還元剤とした低温固相還元法を用いることにより,これまで報告されている中で最も強く還元されたチタン酸化物Ti2O3 (= TiO1.5)のナノ粒子の合成に成功したので,その結果について報告する.  合成の手順として,ルチル構造をもつTiO2ナノ粒子(20-30m)を駆動体として用い,これとCaH2を350度で数日間反応させることにより,還元相Ti2O3が得られる.特筆すべき点は,出発物質と生成物質の構造がそれぞれ正方晶と菱面体構造をもつ,つまり,TiO6八面体の骨組みが反応中に大きく変化しているにも関わらず,ナノ構造・形態が維持されていることである.その反応機構の詳細を調べるためにex-situ放射光粉末X線回折実験を行ったところ,中間相としてマグネリ相Ti4O7が生成していることがわかった.
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©  日本セラミックス協会 2012
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