抄録
300~500℃程度の中温領域で作動する燃料電池は発電効率などの点から世界的に注目され、この温度域で機能する電解質の開発が求められている。しかしながらこの温度域で耐久性に優れ且つ高いプロトン伝導性を示す安価な材料は未だ開発されていない。
我々はガラス組成や処理条件を検討することにより、300℃を超える温度域でプロトン輸率(tH)=1のリン酸塩ガラスの作製に初めて成功し、その燃料電池発電を確認した[1]。このガラスは潮解性などを示さず、熱的・化学的耐久性にも優れている。しかしながらそのプロトン伝導機構については、不明な点も多い。伝導機構の詳細を解明できれば、燃料電池の高出力化などが期待される。本研究では、ガラス中のP=O非架橋酸素(Onb)に注目して、単純組成である2成分リン酸アルカリ土類ガラスを溶融法で作製した。水素分圧比の異なる雰囲気でのプロトン導電率測定などの結果をもとに、プロトン導電率の検討を行った。