抄録
近赤外蛍光イメージングは短時間で高スループットに微小な病変を高感度に検出する手法として期待が高まっている。本研究では、近赤外領域かつ自家蛍光の影響をほとんど無視できる波長領域に、励起・蛍光波長を有する蛍光プローブの創製に取り組んだ。まず初めに、ポルフィリン誘導体であるtetrakis(4-carboxyphenyl)porphyrin (TCPP) が結合したシリカ前駆体を調製し、次にこの前駆体の加水分解・縮合により、TCPPを大量に包含したリング状のシリカ/TCPPハイブリッドナノ粒子(シリカ/TCPPハイブリッドナノリング:HNRs)を合成した。このHNRsは直径約55 nmであり、癌ターゲティングに有用なenhanced permeability and retention(EPR)効果が利用できるサイズであった。また、HNRsはin vivoイメージングに最適な近赤外領域に励起・蛍光波長を有していた。さらに、ポリエチレングリコール修飾したHNRsを担癌マウスに静脈投与し、蛍光イメージングにより体内動態を観察したところ、徐々に腫瘍に集積していき、6時間後腫瘍を最も明瞭にイメージングすることができた。