抄録
現在、チタン酸ジルコン酸鉛 (Pb(Zr,Ti)O3、PZT) 系圧電材料はその優れた特性のため多くの分野で用いられている。これは490℃という高いキュリー温度を持つチタン酸鉛 (PbTiO3、PT) に依存していると言っても過言ではない。従って、鉛フリーでPTよりも高いキュリー温度を持つ強誘電体を合成することができれば、環境負荷を大幅に低減すると同時にPZTを超える圧電材料の開発が可能となる。そこで、ペロブスカイト構造のA-siteに酸素との共有結合性が強いBi3+イオン、B-siteにd0電子状態のイオンを含む新規組成に関して研究を行ってきた。現在までに、B-siteに5価と価数が高く、イオン半径が64.0 pm と比較的小さいNb5+イオンを含む (Bi1/2K1/2)(Cu1/3Nb2/3)O3 が強誘電体である可能性がわかっている。同様に、A-siteにBiイオン、B-siteにイオン半径が60.5 pm とNb5+イオンよりも小さいTi4+イオンを含む組成に関しても研究を行った。B-siteイオンのイオン半径や価数の違いによる圧電特性の変化をNbイオンとTiイオンを用いて比較・検討した。