抄録
第一原理計算を用いてスピネル型の高電位正極材料LiNi0.5Mn1.5O4のエネルギー,電子構造に関して詳細な検討を行った.種々の規則構造群に対する全エネルギー計算の結果,フェリ磁性状態で空間群P4332を有する構造が最安定であることが示された.理論電位の計算結果は4.7 Vが得られ、これは実験結果とも一致する.充放電前後の電子構造変化を解析したた結果,Ni2+←→Ni4+での酸化還元反応が充放電反応を担うことが明らかになった.またNiの3d軌道と比較するとMnの3d軌道成分の寄与は小さいことも確認された.このことはスピネル型構造の結晶格子を維持できればMn以外の元素でも同様の5V級活物質となりうることを示唆している.そこで,Liとの複酸化物としてスピネル型構造LiTi2O4を有するTiに注目し,MnをTiで置換したLiNi0.5Ti1.5O4の理論電位を計算した。その結果,LiNi0.5Ti1.5O4においても4.9 Vという高電位を示すことが示された.