抄録
層状希土類水酸化物の多くは硝酸などの無機アニオンがインターカレートされたものであるが、アニオン交換反応によって有機酸アニオンを層間にインターカレートすることもできる。本研究では、層状イットリウム水酸化物(LYH)を基本とし、層内に発光希土類イオン(Eu3+およびTb3+)をドープした際、層間のアニオン種が発光特性に及ぼす影響を調査した。水溶液反応により合成した試料のXRDおよびFT-IR分析により、ビフェニル酢酸イオン、安息香酸イオン、テレフタル酸イオン、マレイン酸イオンおよびシュウ酸イオンで交換されたLYHが得られることがわかった。PL測定では、硝酸系LYHの発光が微弱であったのに対して、アニオン交換したものでは、発光強度の大幅な増加が認められた。これは、インターカレートされた有機酸イオンが光を吸収して層内の希土類イオンにエネルギーを伝えるアンテナ効果によるものと考えられ、LYHが優れた発光材料になる可能性を示唆したものと言える。