抄録
部分安定化ジルコニア(PSZ)は、Y2O3等を固溶させることで高温における安定相の正方晶を室温で準安定保持させることで得られる。高い靭性、優れた生体親和性を有し、インプラントの材料として利用されている。しかし、PSZ は、比較的低温下で正方晶から単斜晶への相転移が起こり、靭性が低下する現象(低温劣化)が知られている。この低温劣化は、水分子の表面への吸着、内部への侵入が原因であると理解されている。一方、PSZ のイオン伝導性を利用して、外部電圧印加により分極状態を形成することができる。本研究では、分極処理による正方晶-単斜晶相変態制御、低温劣化抑制技術の開発を目的とする。既に、電気分極処理によって表面が親水化すること、さらに低温劣化が抑制されることを前回、前々回報告した。しかし、劣化抑制の機構は未解明であり、分極形成機構さらに分極が表面に与える影響についての調査が必要である。本報告では、分極形成機構の解明を目的として、熱刺激脱分極電流(TSDC: Thermally stimulated depolarization current)測定を行った結果について発表する。