抄録
高温高圧下の水が反応関与する水熱合成法は焼結性に優れたチタン酸バリウム粒子の製造など既に工業的に広く利用されている。一般的な固相反応法と比較して、溶解—析出機構に基づく水熱反応では高い反応速度が得られ易く、極めて低温で組成均一性に優れた目的物質が合成できる利点がある。
無鉛圧電セラミック素材の(Na,K)NbO3(NKN)においても、水熱合成法の実施例は粉末および薄膜合成など多数報告されているが、そのアルカリ源の多くは水酸化物原料を使用しており、Na/K比の制御に腐心している。一般に、反応物質の性状によって水熱反応場が強く影響されるため、出発原料の違いやpH制御等によって異なる溶解—析出機構も期待できる。そこで、本研究では、炭酸塩原料を利用したNKN薄膜の合成を試みた。