日本PDA学術誌 GMPとバリデーション
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研究報告
ワイヤレス式ロガ-による真空式高圧蒸気減菌器缶体内への空気漏れの影響に関する検討
上寺 祐之重松 宏馬場 善三熊田 直人
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2004 年 6 巻 2 号 p. 93-97

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抄録
  近年,圧力と温度を計測できるワイヤレス式ロガーが開発された。そこで,今回,熱電対挿入用ポートを持たない真空式高圧蒸気滅菌器において,布製パックの中心部の圧力と温度をワイヤレス式ロガーを用いて測定した。なお,測定時には Bowie-Dick テストサイクルを作動した。
  1回目の測定は,扉パッキングから缶体内への空気漏れにより Bowie-Dick テストが不合格になったときに行った。2回目の測定は空気漏れの部位を修理し Bowie-Dick テストが合格した後に行った。
  1回目および2回目の測定において,実測温度の F0値を求めた。さらに,実測圧力に対応する飽和水蒸気温度を計算し,その F0値を求めた。滅菌工程において実測温度と計算した飽和水蒸気温度を比較検討した。実測温度の F0値と飽和水蒸気温度の F0値も比較検討した。さらに,実測温度と実測圧力を用いて布製パック内の残留空気量を評価した。
  1回目の計測では,滅菌工程において実測温度は飽和水蒸気温度よりも 1.1-1.7℃低く,実測温度のF0値は飽和水蒸気温度の F0値よりも 33.1 低かった。布製パック内の残留空気量は913 cm3であった。
  2回目の計測では,滅菌工程において実測温度は飽和水蒸気温度よりも 0.1-1.2℃低く,実測温度の F0値は飽和水蒸気温度の F0値よりも 24.5 低かった。布製パック内の残留空気量は 325cm3であった。
  扉パッキングから缶体内への空気漏れを修理することにより,布製パック内の残留空気量は減少し,布製パック内への蒸気の浸透性は向上したと考えられた。
  したがって,ワイヤレス式ロガーは,缶体内への空気漏れ部位の存在が布製パックの滅菌効果に及ぼす影響を検討するために有用であることが示唆された。
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© 2004 日本PDA製薬学会
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