抄録
英国基準であるHTM 2010は, Bowie-Dickテストサイクルの滅菌工程を134.0~137.0℃, 3分18秒~3分30秒と規定している。しかしながら, 当手術部に設置された同一機種の真空式高圧蒸気滅菌器3台 (1号機, 2号機, 3号機) には, Bowie-Dickテスト専用のプログラムが搭載されていない。さらに, 滅菌時間は1分ごとにしか設定できない。そこで, 今回, これらの高圧蒸気滅菌器においてHTM 2010に準じてBowie-Dickテストを行う方法を工夫し, その有用性を検討した。
滅菌温度を134.0℃に設定し, 滅菌工程において実測温度を134.0℃以上に保持した時間が, 1号機においては3分10秒, 2号機においては3分5秒, 3号機においては3分15秒になった時点で工程スキップボタンを作動させた。そして, 実測滅菌温度が134.0℃以上である実測滅菌時間をストップウォッチを用いて計測した。さらに, 実測滅菌温度の到達最高温を求めた。
その結果, すべての滅菌器において, 実測滅菌時間と実測滅菌温度はHTM 2010の基準を満足した。したがって, 今回, われわれが工夫した方法はBowie-Dickテストを正しく行うために有用であることが示唆された。
また, この方法においては, 工程スキップボタンを作動させるタイミングを滅菌器ごとに適切に決定することが重要であることも示唆された。