Progress of Digestive Endoscopy
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臨床研究
ベトナムの二地域における上部消化管疾患,Helicobacter pylori感染,背景胃粘膜の検討―日本との比較観察を含めて―
松久 威史富樫 晃祥松倉 則夫山田 宣孝
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2004 年 64 巻 2 号 p. 32-37

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抄録

 我々は中国人,タイ人,ベトナム人(ホー・チ・ミン)の内視鏡検査を行い,胃十二指腸疾患,Helicobacter pyloriH.pylori)感染,背景胃粘膜の相違を調査してきた。今回は,ベトナム社会主義共和国中部の都市,フエでの成績をホー・チ・ミン,日本と比較検討した。その際,H.pylori感染の診断は病理診断法を用い,切片の採取は3点生検法に基づいた。年齢,性別のマッチにより得られたホー・チ・ミン,フエの108例における胃十二指腸疾患をみると,胃癌,消化性潰瘍,正常例の頻度に大きな相違はみられなかった。消化性潰瘍は胃潰瘍よりも十二指腸潰瘍の占める割合が高く(ホー・チ・ミン : 60.0%,フエ : 91.3%),日本人に胃潰瘍が多い成績(58.3%)とは大きく異なっていた。年齢,性別,内視鏡診断をマッチさせた76例のH.pylori感染率は,ホー・チ・ミンに比べフエでやや高いが有意差は認められなかった(各々48.7%,58.9%)。フエと日本の比較(85例)でも近似した値であった(各々50.6%,45.9%)。3点生検による切片#3,すなわち胃体下部小彎側から採取した切片の腺萎縮,腸上皮化生スコアをH.pylori陽性例についてUpdated Sydney systemに従い0~3に判定すると,ホー・チ・ミン,フエの腺萎縮,腸上皮化生スコアはいずれも低値であった。一方,フエと日本のスコアを比較すると,日本人のそれは有意に高値を示した(腺萎縮スコア : 0.89,腸上皮化生スコア : 0.82)。これはH.pylori陽性日本人にのみみられる特有の変化であった。

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© 2004 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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