抄録
症例は70歳男性。健診にて胃ポリープを指摘され内視鏡検査を施行し,胃体上部大彎に表面顆粒状で10mm大のIspポリープを認めたが,組織学的に悪性所見を認めなかったため1年間経過観察したところ2003年10月には15mm大へと増大傾向を示し切除目的で入院となった。術前検査にてsm浸潤も否定できなかったが,患者,家族の強い希望によりEMRを施行した。切除標本ではsm2相当の浸潤を伴う乳頭腺癌と診断された。免疫染色にてMUC-5AC・MUC-6陽性,CD10・MUC-2陰性であり,胃型形質を発現している腺癌であった。組織学的には肉眼的境界よりも広く進展していたが,異所性胃粘膜と胃癌の混在した稀な病変と考えられた。
内視鏡所見と組織学的所見が乖離し,今後も慎重な経過観察が必要と考えられた。