Progress of Digestive Endoscopy
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臨床研究
2チャンネルスコープを用いたESD-安全性を高めるための新たな試み-
梅谷 薫林 鈞貴佐藤 晋一郎原田 英明桑原 智子
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キーワード: ESD, 2チャンネルスコープ
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2007 年 70 巻 2 号 p. 31-34

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抄録
 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による合併症,特に穿孔の対策として,「2チャンネルスコープを用いたESD(2ch法)」を開発した。病変を把持鉗子で挙上して剥離面を十分広く確保,すなわち counter-traction をかけながら,他方の鉗子から出したフックナイフを用いて剥離を進める方法である。今回は,従来のESD手技および牽引をかけるために我々が工夫した他の手法,すなわち①糸付きクリップを用いたESD,②内視鏡外側からの鉗子を用いた切除法,③2本の内視鏡を用いた切除法との比較検討を行った。
 2002年11月より2007年1月までのESD症例182病変(食道18病変,胃88例,大腸76例)の検討の結果,従来法55.9±40.2分に対して,2ch法36.8±22.7分と,明らかな切除所要時間の短縮を認めた。胃での穿孔例は従来法2例に対して2ch法では認めず,穿孔率の低下につながると考えられた。大腸でも同様の結果であった。なお他の牽引法では手技が煩雑になり,切除所要時間は従来法に比べて有意の差を認めなかった。またいずれの牽引法でも穿孔例を認めていない。
 本法の手技は簡便で安全性が高く,ESDの合併症を減らす意味で有効であると考えられた。ただし現在の機器では鉗子孔間の距離・角度を調節できず,剥離の手技に一定の熟練を要するなど,今後器具と手技にさらに改良の余地があると考えられた。
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© 2007 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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