2011 年 79 巻 2 号 p. 37-40
大腸のESDは普及しつつあるが,内視鏡治療後などの瘢痕形成を伴った遺残再発病変に対する治療成績の報告は十分ではない。今回当施設で大腸瘢痕合併症例に対するESDの経験を報告する。当院で施行した大腸ESDは97病変であり,そのうち瘢痕合併症例はEMR後3例,TEM後3例であった。一括切除率は83.3%,完全一括切除率も83.3%であり,組織学的にはすべて腺腫成分を含んだ粘膜内に限局した高分化型腺癌であった。分割になった1例に腺腫成分の局所再発を認め追加治療が必要であった。偶発症は後出血を認めず,穿孔が2例に認められたが,全例経過観察で改善した。
EMRまたはTEM後の瘢痕を有した遺残再発病変に対する大腸ESDは,完全一括切除率は高いが,技術的な難易度が高く,また偶発症も高頻度に合併することから,その施行に際しては慎重であるべきであり,現段階での適応はcontroversialであると考えられた。