抄録
高齢化の進む本邦において無症状の高齢者の大腸癌スクリーニング検査は何歳までを対象とすべきかの指標はなく,医療現場の混乱が見受けられる。今回,高齢者の大腸癌検査について世田谷区の中核病院である当院(関東中央病院)に紹介歴のある当院近郊18クリニック医師と,当院大腸内視鏡検査(CS)施行6医師に便潜血検査(FOBT)とCSについてのアンケート調査を実施した。結果は90歳以上の患者にも大腸検査をすべきが,FOBTで22.2%vs.0%(クリニックvs.当院)とCSで15.4%vs.0%(クリニックvs.当院)であった。90歳以上の高齢者について,FOBTとCSスクリーニング検査に対する必要性の認識が,「一部で必要」とするクリニック医師と「全く必要ない」とする当院内視鏡医師との間で大きく意見が異なることがわかった。患者本人の検査希望や血便・腹痛などの自覚症状がある高齢者を排除すべきではないが,今回我々が検討した大腸検査ローカル・ルールとして,①90歳以上または10年予後が見込めない患者にCSスクリーニングは勧めない(必要な場合はCTなどの非侵襲検査),②CS適応は緊急時を除き腸管洗浄液の自己内服が可能な患者,85歳以上の患者には原則的に入院でのCSを勧めるとした。このような無症状の高齢者に対するFOBTを含めた大腸癌スクリーニング検査に対する年齢制限などの指針を日本消化器内視鏡学会主導である「大腸がん検診ガイドライン」での検討が望まれる。今回のローカル・ルールは強制的なものではなく,問題提起も兼ねて内視鏡地域医療連携指標の1つとして作成した。