2017 年 90 巻 1 号 p. 59-61
症例は33歳男性.心窩部痛を主訴に来院し,腹部CT検査で胃前庭部に限局性の壁肥厚像を認めた.上部消化管内視鏡検査を施行したところ,同部に浅い潰瘍が多発して認められ地図状に癒合していた.内視鏡像と患者の生活歴(不特定多数との性交歴)から当初,胃梅毒を疑った.しかし梅毒血清反応は陰性で,病変部の組織の免疫染色でもトレポネーマは認めなかった.胃粘膜組織培養の結果,Streptococcus viridansが検出され,胃蜂窩織炎と診断し得た.治療として抗菌薬(AMPC)を開始し保存的に軽快した.胃蜂窩織炎や胃梅毒も急性腹症の鑑別疾患として念頭に置き,慎重に診断と治療を進めるべきと考えられた.