1993 年 43 巻 p. 96-99
1990年11月より1992年9月までの1年11ヵ月間に当院にて切除された陥凹型早期胃癌のうち,ファイバースコープと電子内視鏡の両者にて観察を行った42病変について,浸潤範囲診断の比較検討を行った。癌巣の基本色調を褪色(22例),同色(5例)および発赤(15例)の3つに分類した。それぞれを内視鏡所見として色調の明瞭化,血管透見性,胃小区模様の描出,陥凹境界,光沢についてファイバースコープに対する電子内視鏡の有用性について検討を行った。また,切除標本の病理組織学的検討も加えた。発赤群では約半数の症例で電子内視鏡が有効であった。同色群で両者間に大差は認めなかった。褪色群では電子内視鏡が無効であることが多く,しかも癌の粘膜内浸潤が表層浸潤型のもので顕著であった。しかし,色素内視鏡の併用にて明瞭化され,これを補うことができた。