消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
43 巻
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掲載論文カラー写真集
内視鏡の器械と技術
臨床研究
  • 長嶺 伸彦, 上野 規男, 大田 由己子, 福田 正巳, 富山 剛, 相澤 俊幸, 木村 健
    1993 年 43 巻 p. 83-86
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     内視鏡的食道静脈瘤結紮術(endoscopic variceal ligation,EVL)前後における食道静脈瘤および側副血行路の血行動態を,カラードプラ超音波内視鏡(color Doppler endoscopic ultrasonography,CD-EUS)にて観察し,EVLによる血行動態の変化について臨床的検討を加えた。EVLを施行した食道静脈瘤症例24例中,CD-EUSにてEVL前後またはEVL後に血行動態の観察を行った11例について,食道壁内,壁外および供血路の血流について検討した。その結果,①EVLの治療効果がCD-EUSにより血行動態的に判定可能であった。②治療有効例では食道壁内の血流消失や減少を認めた。③食道壁外や供血路などの深部血行路は,血行動態的に著変を認めなかった。付随所見として,食道壁の肥厚がEISの既往を有する症例で観察された。EVLは内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy,EIS)に比し侵襲の少ない治療法であり,患者のQOL(quality of life)の立場からも,食道静脈瘤に対する治療として有効な方法の1つと考えられる。しかし,主に途絶しうる血流は食道壁内であり,EVLの適応決定,経過観察には慎重を要すると考えられた。
  • 石垣 徳江, 國分 茂博, 村上 匡人, 高田 雅博, 中井 久雄, 杉本 政直, 柴田 久雄, 西元寺 克禮
    1993 年 43 巻 p. 87-91
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)は,食道静脈瘤に対する新しい治療法として,簡便さ,安全性の点からも注目されている。しかし,胃静脈瘤に対しての評価はほとんど行われていない。今回われわれは,胃静脈瘤に対し硬化療法(EIS)の補助療法として,Stiegmannの方法に基づき,ラテックス製のOリングを用いたEVLを試みたので報告する。対象は男性2例,女性3例の計5例である。適応は緊急2例,待期1例,予防2例。症例1は緊急例であり,胃静脈瘤破裂に対するEIS施行後も同部より再出血しEVLを施行,その後EISを併用し,出血部位は完全に治癒した。症例2は待期例で,EIS施行後,胃静脈瘤の発赤,膨隆が強く,出血の危険性が高いためEVLを施行,その後EIS併用により経過は良好である。症例3の緊急例は出血時全身状態が悪く,EVLを施行,その後EISを施行した。症例4,5の予防例は,EISにて形態の縮小効果に乏しかったが,EVL併用にて静脈瘤の平低化を認めた。全症例で再出血を認めなかった。われわれはEVLの適応を,①合併症の多い高齢者,②硬化剤にアレルギーの既往のある例,③緊急例,④硬化剤による潰瘍形成後にも出血を認めた例,⑤硬化剤注入により供血路は描出されたが静脈瘤の平低化に乏しい例と考えている。EVL単独では,EVL後のEVISで胃静脈瘤への血流が造影されることより,静脈の荒廃効果に乏しいが,EISの併用により治療効果が得られると考えられた。
  • 松久 威史, 伊藤 正秀, 大島 博
    1993 年 43 巻 p. 92-95
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     胃液中に逆流した胆汁酸中に含まれるタウロコール酸を,胃体下部小彎側における粘膜の萎縮傾向(大島の基準による)と比較検討した。血管の軽度透見(+)群,中等度透見(⧺)群におけるタウロコール酸の逆流頻度(各々57.1%,N=14,55.6%,N=9)は,血管透見像の全く認められない(-)および色むら程度で血管透見像のみられない(±)群における逆流率(18.8%,N=16)より有意に高い値を示した(各々p<0.05,p<0.001)。タウロコール酸濃度と血管透見像の関係について観察すると,(-),(±)群では1.82±1.07nmol/ml(N=16)であるのに対し,(+)群,(⧺)群では高濃度であった(各々17.43±6.97nmol/ml(N=14),p<0.05,21.45±14.47nmol/ml(N=19))。これらより胃内に逆流したタウロコール酸と萎縮性胃炎の間に明らかな関連性が認められた。また,タウロコール酸の逆流頻度と濃度には内視鏡的幽門輪形態,蠕動運動による相違はみられなかった。
  • 中井 久雄, 大井田 正人, 山縣 さゆり, 菅 知也, 田辺 聡, 小泉 和三郎, 横山 靖, 西元寺 克禮
    1993 年 43 巻 p. 96-99
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     1990年11月より1992年9月までの1年11ヵ月間に当院にて切除された陥凹型早期胃癌のうち,ファイバースコープと電子内視鏡の両者にて観察を行った42病変について,浸潤範囲診断の比較検討を行った。癌巣の基本色調を褪色(22例),同色(5例)および発赤(15例)の3つに分類した。それぞれを内視鏡所見として色調の明瞭化,血管透見性,胃小区模様の描出,陥凹境界,光沢についてファイバースコープに対する電子内視鏡の有用性について検討を行った。また,切除標本の病理組織学的検討も加えた。発赤群では約半数の症例で電子内視鏡が有効であった。同色群で両者間に大差は認めなかった。褪色群では電子内視鏡が無効であることが多く,しかも癌の粘膜内浸潤が表層浸潤型のもので顕著であった。しかし,色素内視鏡の併用にて明瞭化され,これを補うことができた。
  • 岸 秀幸, 石井 俊也, 中島 俊一, 松村 修志, 井上 博和, 石塚 俊一郎, 小沢 政成, 坂井 謙一, 安田 正俊, 発地 美介, ...
    1993 年 43 巻 p. 100-103
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     内視鏡的に偽膜を確認して偽膜性大腸炎と診断した24例を,偽膜の形態より半球型と膜型の2型に分類し臨床的に検討した。半球型は全身状態の不良な症例に多く,膜型は全身状態の良好な症例に多かった。また近年多発する膜型は第三世代のセフェム系の経口投与が関連していた。病理組織学的に半球型は2型,3型を,膜型は1型を呈していた。症状発現から内視鏡までの日数,治療による軽快の日数に各型の差は明らかでなかった。重篤な基礎疾患者のみでなく,軽微な場合でも発症するので,臨床症状が軽症でも積極的に本症を疑って内視鏡を施行する必要があると考えられた。
  • 渡辺 七六, 井上 博和, 小林 博之, 岸 秀幸, 長谷川 毅, 小川 聡, 安田 正俊, 安斉 保, 前谷 容, 福本 学, 藤沼 澄夫 ...
    1993 年 43 巻 p. 104-107
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     1990年12月以降,ステロイドの強力静注療法が無効であった手術拒否3例の重症,1例の中等症潰瘍性大腸炎に対し,one shot動注療法を施行した。中等症の1例は著効し,以後の保存的治療により寛解した。無効であった3例の重症例のうち,1例はone shot動注では無効であったが,3日間の持続動注が奏効し,大腸を温存して寛解が得られた。1例は1年後,二期的に大腸全摘術を施行した。1例はtoxic megacolonの改善が認められず,緊急手術したが,合併症により死亡した。重症例,ことに電撃型などの症例では短期間の内科的治療で評価を下し,治療の継続,外科的処置への変換などを判断する必要がある。また,外科的処置に移行する際,投与されたステロイド量は少ない方が合併症減少には有利である。従って,動注療法を強力静注療法に先駆けて施行し,保存的治療の限界を早期に判断すべきと思われた。また,動注療法の効果を短期間に評価判定するには,白血球数,CRPなどの炎症所見では,強力静注療法の影響もあり不適当と思われたが,腹痛,排便状況,発熱などの臨床症状は効果判定には有用と思われた。
  • 藤沼 澄夫, 酒井 義浩, 中島 俊一, 松村 修志, 石井 俊也, 岸 秀幸, 片桐 耕吾, 安田 正俊, 広瀬 安紀, 鴻上 健一, 渡 ...
    1993 年 43 巻 p. 108-111
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     内視鏡下で生理食塩水局注後に摘除(endoscopic resection,以下ERと略)した214病変における過形成性ポリープ21病変(9.8%)について検討した。形態はすべて表面型腫瘍に近似していたが,組織学的に腺管の形状より,単純延長型(腺管が分岐や拡張することなく単に延長するもの)10病変と鋸歯状型(腺管が拡張し鋸歯状を呈するもの)11病変とに分けた。その結果,単純延長型は高さが低く,大きさは9mm以下が多く,白色・同色調で,表面性状は細顆粒状が多かった。一方,鋸歯状型は高さが高く,前者に比し大きい病変が多く,同色・赤色調で,表面性状は結節状・中心陥凹が多かった。単純延長型は既存腺管の垂直方向への高さの増加のみであり,表面性状は周囲の腸小区模様に類似し,さらに間質の拡大がないため低い小さな病変にとどまると考えられた。一方,鋸歯状型は腺管が拡張して数腺管が集簇し小結節状を呈したり,また小結節間の相対的な陥凹が多様な表面性状を呈する原因と考えられ,さらに広い間質も関与し,高く大きな病変になることが想定された。ER直後に実体顕微鏡を施行しえた病変でも,過形成性変化と認識困難な病変が少数存在し,色素法や拡大観察を含めた詳細な表面構造の観察が診断上重要と思われた。
  • 渡辺 七六, 井上 博和, 小林 博之, 掛村 忠義, 岸 秀幸, 長谷川 毅, 安田 正俊, 小川 聡, 安斎 保, 佐藤 正弘, 藤沼 ...
    1993 年 43 巻 p. 112-115
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     内視鏡的に摘除し,組織学的に検討可能であった大きさ10mm以上,高さ5mm以上の上皮性腫瘍(腺腫のみ51病変,腺腫内癌42病変)を対象とした。腺腫内癌を最大割面における占有癌巣面積により,少量(10%以下)17病変,中等量(30-70%)15病変,多量(90%以上)5病変,sm癌5病変にわけ,内視鏡的検討を行った。肉眼型では無茎性,広基性となるに従い癌量の増加,sm癌の比が増加した。頭部形状を検討すると,球状,長球状では腺腫,少量の腺腫内癌が多かったが,不均整な形態を示したものは癌量が多い傾向が認められた。また,非対称性や頂部の平坦・陥凹は癌量の多いものに多く認められた。大きさは必ずしも癌量の多さと相関せず,sm癌では逆に小さなものが多かった。さらにまた,発赤の強さと癌量の多少とは相関しなかった。
  • 吉岡 秀樹, 石井 俊也, 中島 俊一, 松村 修志, 井上 博和, 石塚 俊一郎, 小沢 政成, 坂井 謙一, 岸 秀幸, 安田 正俊, ...
    1993 年 43 巻 p. 116-119
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     内視鏡的に摘除し,かつ組織学的に早期大腸癌と診断した227例,237病変のうち,最大径が5mm以下の微小癌18病変と,最大径が6-10mmの癌63病変を内視鏡的,病理組織学的に比較して,その特徴像を検討した。その結果,①微小癌は早期癌の7.6%に相当し,まれな病変ではなかった。②微小癌は6-10mmの癌と比較して,腺腫非併存,横行結腸の局在,無茎性隆起が高率であった。③色調,表面性状は6-10mmの癌と比較して特徴的所見を見出せなかった。④微小癌のうち術前診断可能であったのは粗大顆粒状,中心陥凹を呈した5病変(36%)に過ぎなかった。⑤対象を5mm以下の微小癌に絞っても,組織学的に腺腫を母地として発生する癌とde novo発生する癌の2通りがあると思われ,腺腫非併存癌7病変中2病変(29%)は粘膜下層浸潤があり,腺腫併存癌と比較して早期に浸潤することが示唆された。
  • 神沢 輝実, 伊沢 友明, 屠 聿揚, 榊 信廣, 田島 強
    1993 年 43 巻 p. 120-122
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     膵癌患者の入院時における上部・下部消化管内視鏡検査の異常所見について検討した。入院前後1ヵ月間に上部消化管内視鏡検査(142例)か大腸内視鏡検査(28例)が施行された膵癌146例(頭部癌69例,鉤部癌9例,体部癌49例,尾部癌19例)を対象とし,膵癌の周囲消化管への直接浸潤所見に関して検討した。胃内視鏡検査では,142例中42例(圧排所見33例,浸潤所見9例)30%に異常を認め,膵体部癌,膵尾部癌で39%,47%とその頻度が高かった。十二指腸下行脚の内視鏡検査では,122例中43例(圧排所見15例,浸潤所見28例)35%に異常を認め,膵頭部癌と膵鉤部癌が44%,57%と高率であった。大腸内視鏡検査では28例中6例21%に,横行結腸の狭窄・閉塞が認められ,うち5例が膵尾部癌であった。パンエンドスコピーが普及した現在,日常検査で進行膵癌を見逃さないための注意が必要である。
症例
  • 日野 いづみ, 田中 文彦, 浅川 博, 松岡 美佳, 桜井 隆弘, 小井戸 薫雄, 根岸 道子, 稲玉 英輔, 加藤 慎一, 柴田 博之, ...
    1993 年 43 巻 p. 123-126
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     持続携行式腹膜透析(CAPD)の歴史は13年と浅く,その消化器合併症については不明な点が多い。胸やけを主訴とした逆流性食道炎のCAPD患者2症例を経験したので報告する。上部内視鏡検査では,2例とも食道裂孔ヘルニア・バレット食道を合併していないにもかかわらず,高度の逆流性食道炎と診断された。食道内圧測定検査では,下部食道括約筋圧はいずれも正常値であった。よって,逆流性食道炎の原因として,CAPD液の腹腔内注入による腹圧の上昇により,胃液が食道内に逆流して生じたものが考えられた。当院でのCAPD患者の逆流性食道炎発生は32例中2例(6.25%)と高頻度であった。13年間でCAPD患者数は6,000人にまで増加している。従来CAPDに合併した逆流性食道炎の報告はなく,今後CAPD患者の消化器合併症の1つとして逆流性食道炎は注目されるべき重要な疾患と考えられたので報告した。
  • 三吉 博, 葉梨 圭美, 花谷 勇治, 浅越 辰男, 蓮見 直彦, 関根 勝, 大塚 美幸, 長岡 信彦, 高見 博, 小平 進
    1993 年 43 巻 p. 127-129
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     食道粘膜剥離または食道粘膜下解離は,食道粘膜裂創と食道破裂の中間に位置するまれな疾患である。われわれは,原因不明で発生した特発性食道粘膜下解離の1例を経験したので報告する。症例は41歳男性で,突然の頸胸部痛と嚥下困難を主訴として発症し,食道透視,食道内視鏡,胸部CT検査にて食道粘膜下解離の診断を得た。治療は保存的に行い,約2ヵ月間の入院を要した。今回の検討より,従来1つの疾患単位とされ,用語的にも混同して用いられてきた食道粘膜剥離と食道粘膜下解離は,形態的に異なり,臨床的にも治癒期間の相違が存在することから,区別されるべきであると考えられた。
  • 宮本 博史, 和光 儀威, 花城 実, 安部 千晶, 萩原 徹, 田村 瑞枝, 久山 泰, 山中 正己, 田中 文彦
    1993 年 43 巻 p. 130-133
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は36歳女性。平成4年10月に口腔内アフタ,外陰部潰瘍,発熱を認めて入院。不完全型ベーチェット病と診断し,プレドニゾロン30mg経口投与を開始した。嚥下時困難,嚥下時痛などの自覚症状はなかったが,上部内視鏡検査にて中・下部食道に多発性潰瘍を認めた。生検組織像では炎症細胞の浸潤のみで,非特異的炎症所見がみられた。また下部消化管検査では,小腸・大腸に異常所見は認められなかった。第20病日の上部内視鏡検査にて潰瘍の治癒を確認した。ベーチェット病に食道潰瘍を合併することはまれであり,1991年までに38例にすぎないが,狭窄,穿孔などの重篤な合併症をひきおこすため,ベーチェット病と診断された場合,症状の有無にかかわらず内視鏡検査を行う必要があろう。また,ベーチェット病の治療は現在確立されたものはないが,ステロイド剤が有効とする症例もふえており,今後症例を重ねて検討する必要があると考えられる。
  • 吉田 繁夫, 浅田 学, 鈴木 健士, 中村 朗, 糸林 詠, 紫村 治久, 高石 佳則
    1993 年 43 巻 p. 134-137
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     高度の食道胃吻合部狭窄に対し,テフロン製の胆管拡張用同軸ダイレーター(ゼオンメデイカル社)を利用し,狭窄の解除を行った。症例は食道癌および特発性食道破裂の術後の各1例で,狭窄部は前者は直径1mm,長さ3mm,後者は直径2mm,長さ15mmであった。内視鏡直視下に狭窄部にガイドワイヤーを挿入し,続いてX線透視下にガイドワイヤーに被せるようにして直径2mmの同軸ダイレーターを挿入した。さらに重ねて3,4,5mmのダイレーターを被せて挿入し,狭窄部を拡張した。その後Rigiflexバルーンダイレーター(Microvasive社)およびSBMバルーンダイレーター(住友ベークライト社)を使って拡張を続けた。吻合部は十分に拡張され,普通食を食べられるようになった。その後は再狭窄の症状はない。バルーンダイレーターを挿入できないような高度狭窄の解除に同軸ダイレーターが有効であった。
  • 鈴木 義之, 足立 ヒトミ, 根本 行仁, 池田 みどり, 黒川 きみえ, 河上 牧夫
    1993 年 43 巻 p. 138-142
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は49歳女性。心窩部痛を主訴に当科を受診し,胃内視鏡検査で胃体部大彎に島状の隆起部が散在して認められ,その他の部位には高度萎縮所見がみられたため,精査入院となった。入院時現症では上腹部皮下にウズラ卵大の腫瘤を触知する以外,特記すべきことなし。検査所見では貧血や白血球の増加などなく,血清ガストリン値は329と高値,ペプシノーゲンⅠ,Ⅰ/Ⅱは低値を示し,胃液は無酸,さらにビタミンB12は正常,PCA(-)IFA(-)であった。胃X線検査で胃体中上部の大彎を中心に島状の隆起性変化がみられた。胃内視鏡の再検では入院前と同様の所見で,コンゴーレッドテストで胃体中部大彎の島状隆起部のみに変色がみられた。生検組織検査でも島状部は胃底腺の過形成が認められ,周囲は高度の萎縮所見であった。また腹部腫瘤の摘出検索では脂肪腫で,胃炎との関連はなかった。以上,限局性過形成性変化の多発を伴う高度萎縮性胃炎の1例を経験し,胃炎の進展様式を考える上で,示唆に富む症例と思われ報告する。
  • 広田 文雄, 森 隆彦, 阿部 和裕, 中村 尚志, 木村 博司, 斎藤 和磨, 岸川 哲二郎, 田所 美佳, 佐藤 重信, 永井 孝三, ...
    1993 年 43 巻 p. 143-145
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は54歳男性。主訴は心窩部痛。上部内視鏡検査で,胃前庭部に周囲に発赤と多発性の小潰瘍を伴い,表面顆粒状を呈する約2cm大の隆起性病変を認めた。隆起性病変の生検から肝組織が採取され,肝穿通性胃潰瘍と診断した。腹膜刺激症状はなく,炎症所見も乏しいため,絶食と安静,中心静脈栄養とH2受容体拮抗剤の投与で保存療法を開始し,治療後第14病日には隆起性病変は消失し,潰瘍も治癒傾向を示した。胃内腔へ肝が突出した穿通性胃潰瘍はまれで,かつ保存的に治癒しえた症例であるので報告する。
  • 中村 啓, 溝渕 昇, 勝浦 康光, 前川 武男, 榊原 宣
    1993 年 43 巻 p. 146-149
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は43歳男性。上腹部不快感を主訴に近医を受診した。胃粘膜下腫瘍の診断で,平成5年1月5日当科に紹介入院された。胃X線検査で胃前庭部に直径5cm大の境界明瞭,表面平滑な腫瘤状陰影を認めた。胃内視鏡検査でも同部に急峻な立ち上がりをもった半球状の腫瘤を認め,鉗子の圧迫でcushion signを認めた。超音波内視鏡で胃壁第3層に連続してhigh echoを示す充実性腫瘍像を認めた。内部は不均一で隔壁が認められた。以上より胃脂肪腫と診断したが,超音波内視鏡所見で胃脂肪肉腫も完全に否定できなかった。平成5年1月22日,幽門側胃切除術を施行した。病理組織検査では脂肪腫の診断であった。胃脂肪腫は比較的まれな疾患であり,本邦167例の報告があるのみである。平均年齢58.5歳,女性にやや多く,占拠部位はA領域,長径5cm以下のものが多数を占めていた。脂肪腫に特徴的な症状はなく,術前診断がつかないため胃切除術が行われる症例が多かった。
  • 石井 俊也, 中島 俊一, 松村 修志, 井上 博和, 石塚 俊一郎, 小沢 政成, 坂井 謙一, 岸 秀幸, 長谷川 毅, 安斉 保, 藤 ...
    1993 年 43 巻 p. 150-153
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は58歳男性。慢性アルコール性肝障害のため当科入院。食欲不振,上腹部不快感を訴えたため上部消化管内視鏡を施行したところ,胃体下部前壁に不整円形で一部粘膜ひだの集中を伴う境界不明瞭な陥凹性の褪色領域を認め,生検にてアミロイドの沈着が認められた。褪色域以外の胃粘膜,十二指腸球部,回腸,S状結腸,直腸からも生検を施行したが,アミロイドの沈着は認められなかった。肝生検は未施行であり,血清アミロイドA蛋白も高値であったが,血液・生化学検査,理学所見,画像診断上から,全身性および続発性アミロイドーシスを積極的に示唆する所見は認められないため,本症例は胃の極めて小範囲の限局性アミロイドーシスと診断した。陥凹所見を呈した胃限局性アミロイドーシスはまれであり,文献的考察を加え報告した。
  • 荒川 丈夫, 大井田 正人, 田辺 聡, 小泉 和三郎, 横山 靖, 西元寺 克禮, 上杉 秀永, 中 英男
    1993 年 43 巻 p. 154-157
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は40歳女性で,胃部不快感を主訴に当院を受診した。血液検査では鉄欠乏性貧血および蛋白漏出に伴う低蛋白血症が認められた。上部消化管造影および胃内視鏡検査では,体下部から前庭部にかけて山田Ⅱ-Ⅳ型を呈するポリープが多数認められた。数回にわけてポリペクトミーを施行した。組織所見では若年性ポリポーシスの所見であり,一部に腺管腺腫が認められた。胃に限局する若年性ポリポーシスの報告はまれである。本症例の妹には癌の併存する胃若年性ポリポーシスを認めている。今後,ポリープの新生および癌化に関して十分な内視鏡的経過観察が必要と考えられる。
  • 吉本 均, 二木 真琴, 岩切 勝彦, 澤田 秀雄, 末岡 伸夫, 伊藤 敏治, 香川 隆男, 平川 恒久, 小林 正文, 小嶋 隆行, 松 ...
    1993 年 43 巻 p. 158-162
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は33歳女性。健診の上部消化管造影で多発性胃隆起性病変を指摘され,精査加療目的で当科入院となった。内視鏡検査で噴門部から胃体部にかけて多彩な形態を示す隆起性病変が認められた。表面凹凸,びらん,発赤を伴う亜有茎性病変が2ヵ所,粘膜下腫瘍様形態のものが1ヵ所,軽度発赤を伴った山田Ⅱ型病変が1ヵ所,表面が周囲の粘膜と同様な山田Ⅰ型病変が3ヵ所認められた。亜有茎性病変など3病変の生検でカルチノイドと診断された。血清ガストリン値は880pg/mlと高値であった。胃全摘術およびリンパ節郭清術を施行した。術前に診断された3病変の他に組織学的検索により5病変,計8病変にカルチノイドが認められた。肉眼的に胃のひだの萎縮は認められなかったが,組織学的には胃底腺領域に萎縮が認められ,A型胃炎の所見であり,更に内分泌微小胞巣が散在性に認められた。4種類の形態を示した多発性胃カルチノイドの1例を経験したので報告する。
  • 斎藤 真理, 松岡 幹雄, 三屋 公紀, 高尾 正彦, 松山 小太郎, 堂森 興一郎, 高谷 育男, 岡崎 博, 関沢 英一
    1993 年 43 巻 p. 163-165
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は63歳男性。1989年,右母指に悪性黒色腫を認め,腫瘍切断術が行われた。1992年には肺と脳への転移が確認された。その後1992年12月に大量下血を生じ,重症貧血を呈した。上部消化管内視鏡検査で,胃体上部から下部にかけて,発赤を伴い中心に陥凹を有する多発性隆起性病変を認めた。生検から悪性黒色腫の胃転移と診断された。観察時には出血は認めなかったが,粘膜下腫瘍の表面からの大量出血を生じたものと推定された。一般に胃転移性腫瘍は血行性あるいはリンパ行性に粘膜下層に浸潤増殖するため,早期より出血することは少ないとされている。また,悪性黒色腫の転移層はhypovascularとする報告もあるが,本症例のような広範囲転移例ではhypervascularであることが多いとされている。従って,病変部の腫瘍血管が破綻した結果,大量の出血に至ったものと思われる。
  • 本橋 修, 幾世橋 篤, 佐野 秀弥, 高木 精一, 本橋 久彦, 亀田 陽一
    1993 年 43 巻 p. 166-169
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は60歳女性。主訴は心窩部痛。胃X線および内視鏡で胃角部後壁にⅡc+Ⅲ様進行癌を疑わせる病変を認めたが,生検(前医および当院第1回目)ではGroup Ⅱであった。当院第2回目の生検組織診ではGroup Ⅳ,adenocarcinoma,tub1と診断され,1992年2月17日胃亜全摘が施行された。切除標本の病理組織学的診断では,多彩な組織像を示した胃腺扁平上皮癌であった。病変中央の潰瘍底(Ul Ⅱ)に中分化型扁平上皮癌が認められ,腺癌に関しては分化度が高く,細胞異型と構造異型に乏しく,高好酸性細胞や食道腺導管様多列円柱上皮が粘膜筋板を越えて存在した。さらに多量の粘液を含有した細胞や印環細胞が腺癌と扁平上皮癌辺縁で混在する領域が認められ,腺癌成分と扁平上皮癌成分の移行帯を示唆する所見と思われた。
  • 森 隆彦, 永井 孝三, 中村 尚志, 阿部 和裕, 木村 博司, 斉藤 和磨, 岸川 哲二郎, 田所 美佳, 広田 文雄, 佐藤 重信, ...
    1993 年 43 巻 p. 170-173
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は53歳男性。39歳より糖尿病を指摘されていた。入院時,脱毛,白内障,皮膚硬化を認めた。内分泌学的検査にて,インスリン抵抗性糖尿病と原発性性腺機能低下症を認め,Werner症候群と診断した。経過中,胃部不快感があり,上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部大彎側に約8mmのⅡc型早期胃癌の所見あり,生検にて中分化型腺癌であった。1cm以下のm癌と考えられ,基礎にWerner症候群があり,術後癒合不全の危険が高いため内視鏡的粘膜切除を行った。2回のstrip biopsyにて病巣は切除され,2年6ヵ月経過した現在再発はみられていない。Werner症候群は約10%と高率に悪性腫瘍の合併を認めるが,悪性黒色腫や肉腫がほとんどで,胃癌の合併はまれである。早期胃癌合併例の報告はなく,本症は高度の創傷治癒の遷延を認めることからも,内視鏡的治療のよい適応と考えられ報告する。
  • 安田 千香子, 常喜 信彦, 中島 俊一, 松村 修志, 井上 博和, 小林 博之, 岸 秀幸, 長谷川 毅, 佐藤 正弘, 高田 洋孝, ...
    1993 年 43 巻 p. 174-177
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は64歳男性。上部消化管X線検査にて十二指腸球部に隆起性病変を指摘され,当院を紹介された。内視鏡で幽門輪越しに腫瘤の一部が認められ,十二指腸球部内に局在した。生検組織は高分化型腺癌であったため,胃亜全摘術が施行された。切除標本においては幽門輪上の22×8mmの早期癌であった。胃癌取扱い規約では胃・十二指腸の境界を幽門輪(幽門括約筋の尖端)と図示しているが,本症例では幽門輪上に位置し,組織学的に発生母地を規定するのが困難であった。固定操作などで偏位する可能性を考慮すると,胃十二指腸境界はブルンネル腺の発現点とすることが適切と考え,病変の主座は胃であると診断した。胃十二指腸境界は組織学的所見をもとに判断するのが適切であると考え報告した。
  • 仁科 雅良, 藤井 千穂, 小濱 啓次, 藤村 宜憲, 木原 彊
    1993 年 43 巻 p. 178-180
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     今回われわれは43年聞放置された十二指腸異物の1例を経験し,内視鏡的に摘出しえたので報告する。症例は57歳男性。主訴は吐血。緊急内視鏡を施行したところ,急性胃炎からの出血であった。また,十二指腸に黒色棒状の異物を認めたため,異物鉗子で引っ張ったところ胃まで出すことができた。改めてよく問いただしたところ,昭和20年14歳の時に,友達同士で歯ブラシをむりやり飲ませあったという。20日後に,内視鏡下に異物除去を試みた。ミニスライディングチューブを併用し,TGF-2Dファイバーで把持鉗子を用いて摘出できた。摘出した異物は160×14×5mmのセルロイド製歯ブラシであった。摘出後の経過は良好で,4日後退院となった。
  • 田中 康夫, 富田 潤, 須藤 紀子, 今村 真紀子, 井桁 之総, 深見 公一, 都留 正展, 紀 健二
    1993 年 43 巻 p. 181-183
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は76歳女性。肝硬変で経過観察されていたが,内視鏡的に食道静脈瘤の以外に十二指腸第2部に粘膜下隆起を認めた。color Doppler echo法にて同粘膜下隆起は血流を有し,門脈から連続していることから,十二指腸静脈瘤と診断された。肝硬変に伴う門脈圧亢進症の結果として十二指腸静脈瘤がみられることは比較的まれであり,また画像診断で診断されたことは意義のある症例と考え報告した。
  • 常喜 信彦, 中島 俊一, 松村 修志, 安田 千香子, 井上 博和, 小林 博之, 岸 秀幸, 長谷川 毅, 安田 正俊, 前谷 容, 五 ...
    1993 年 43 巻 p. 184-187
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は40歳女性。検診の上部消化管X線検査で十二指腸ポリープを指摘され,入院した。自覚症状は全くなかった。内視鏡で十二指腸球部後壁に基部を有する有茎性巨大ポリープであり,頭部は下行部ほぼ中央まで達していた。生検上,腫瘍細胞は認められなかった。X線像では頭部は楕円形で,長径が約3cmあり,茎は約7cmあった。同ポリープに対し内視鏡的ポリペクトミーを行った。摘除したポリープは幽門輪を通過させえなかったため,経口腸管洗浄液を用い経肛門的に回収した。検体は34×24×15mmで,組織学的にBrunner腺過形成であった。
  • 松村 修志, 石井 俊也, 中島 俊一, 井上 博和, 石塚 俊一郎, 小沢 政成, 坂井 謙一, 岸 秀幸, 長谷川 毅, 前谷 容, 五 ...
    1993 年 43 巻 p. 188-191
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は65歳男性。64歳時より糖尿病性腎不全のため人工透析を導入した。当院眼科での糖尿病性網膜症術後より,発熱と頻回の下痢があり,当科を受診した。偽膜性大腸炎と診断し,塩酸バンコマイシンの投与を開始したが,経過中に心筋梗塞を併発し,ヘパリンを追加投与した。数日後大量下血を認め,Hb 4.8g/dlまで低下した。上部消化管内視鏡で十二指腸下行部入口部前後壁,主乳頭近傍とその肛門側より下十二指腸角に達する4個の潰瘍を認めたが,大腸を含め出血源は不明であった。大量輸血によってのみ貧血は改善され,腹部血管造影でも出血源を同定しえなかった。再下血の直後に再検したところ,主乳頭より下十二指腸角に達する巨大潰瘍が形成され,新鮮出血を認めたので内視鏡的処置を反復して止血した。重篤な病態を背景にした大量出血を伴う球後部潰瘍は,局所粘膜の循環障害が関与しているものと考えられ,側視鏡を用いた様々な止血操作を駆使することが有効であった。
  • 山田 実名美, 梅田 典嗣, 大和 滋, 柳瀬 幹雄, 白井 裕子, 鶴ヶ野 しのぶ, 花田 佳典, 鈴木 るり子, 三輪 純, 内藤 秀夫 ...
    1993 年 43 巻 p. 192-195
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は69歳男性。上部消化管内視鏡検査にてファーター乳頭部付近に発赤,びらんを有する亜有茎性の腫瘤が発見され,組織所見には高度の異型性をもつ腺腫であった。低緊張性十二指腸造影にて,表面不整,球状の隆起性病変(27×20mm)が認められた。血管造影では血管新生,腫瘍濃染像は認めなかった。以上よりファーター乳頭部癌が疑われ,開腹術が施行されたが,手術所見では乳頭開口部より2-3cm口側に,20×18×15mm大の有茎性ポリープが乳頭開口部を覆う形で存在しており,乳頭近傍に発生した十二指腸腫瘍と診断し,ポリープ摘出術を施行した。病理組織学的には,粘膜内に限局した乳頭腺管腺癌(m,ly0,v0)と診断された。断端に異型細胞はみられず,腺腫内癌の所見であった。術後経過は良好で,14ヵ月後の現在も再発はみられていない。早期十二指腸癌は比較的まれな疾患であり,若干の文献的考察を加え報告した。
  • 木下 知子, 加々美 明彦, 臼井 俊朗, 田中 祥博, 望月 正武, 二階堂 孝, 高橋 宣胖
    1993 年 43 巻 p. 196-199
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は39歳男性。心窩部不快感を主訴に1988年当科を受診した。上部消化管造影で十二指腸球部に半球状の隆起性病変を認め,上部消化管内視鏡検査を施行し,十二指腸球部後壁に径6mmの粘膜下腫瘍様病変を認めたが,3年後の内視鏡検査までは著変を認めなかった。4年5ヵ月後の内視鏡検査では,明らかな腫瘍径の増大(径8mm),隆起の立ち上がりの急峻化が認められた。この時の直視下生検でカルチノイドと診断された。十二指腸部分切除術が施行され,粘膜下層に高度の浸潤が認められた。免疫組織学的検索ではLeu 7,Chg A,NSEが陽性,内分泌学的にガストリンに強陽性,インスリン,ソマトスタチンに弱陽性を示した。4年以上にわたり,カルチノイドの形態的変化が内視鏡的に観察された症例は1例報告されているのみであり,しかも直視下生検で診断しえた症例は,自験例も含め22症例と少なく,文献的考察を加え報告した。
  • 中野 真, 村田 厚, 吉田 俊太郎, 仲谷 弘明, 青木 繁, 渕上 正弘, 田中 昭平, 根本 則道
    1993 年 43 巻 p. 200-203
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は56歳女性。主訴は水様性下痢,腹痛である。既往歴として19歳時,肺結核で右胸郭形成術,48歳より慢性関節リウマチで治療を受けていた。入院時,TP 4.4g/dl,Alb 2.2g/dlと著明な低蛋白血症を認めた。止痢剤,IVHにても改善がみられず,全身状態も悪化した。消化管アミロイドーシスを疑い,直腸と胃の粘膜生検をしたところ,ともにアミロイドの沈着を認めた。prednisolone 60mg/日を開始,以後漸減するとともに,dimethyl sulfoxide(DMSO)4ml/日の経口投与を開始した。低蛋白血症は徐々に解消され,下痢も消失した。ステロイド,DMSOが臨床的に有効であった消化管アミロイドーシスを経験したので報告した。
  • 岡 誉子, 橋本 洋, 池田 郁雄, 中村 真一, 千葉 素子, 春木 京子, 加藤 明, 横山 聡, 光永 篤, 村田 洋子, 長廻 紘, ...
    1993 年 43 巻 p. 204-207
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は58歳男性で,1987年5月食思不振にて当科を受診し,内視鏡検査にて悪性リンパ腫と診断され,以後5年間にわたり経過観察された。初診時の消化管病変は,胃,十二指腸,大腸ともに表層に限局し,超音波内視鏡(EUS)検査では胃壁の肥厚は認めなかった。生検にて悪性リンパ腫(diffuse medium cell type)を認め,免疫染色では胃,十二指腸,大腸ともに同一のモノクロナリティーを認めた。化学療法を年2回の割合で施行し,消化管病変は消長を繰り返したが,1991年8月,扁桃およびリンパ節の腫張を認め,同時期に消化管にも隆起性病変,深い潰瘍性病変および消化管壁の肥厚が出現し,形状が変化した。これらより,消化管病変は全身性悪性リンパ腫によるものと考えられ,全身性の悪性リンパ腫の消化管病変は他病変と同様の経過を示すことが示唆された。
  • 桜井 秀樹, 権田 厚文, 藤井 祐二, 塩見 精朗, 東山 明憲, 日野 眞子
    1993 年 43 巻 p. 208-210
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は71歳女性。右下腹部腫瘤を主訴に精査加療目的で入院した。大腸X線検査では回腸末端から盲腸,上行結腸にかけ外側後方からの壁外性の圧排が認められ,虫垂腫瘍,後腹膜腫瘍が疑われた。大腸内視鏡検査では盲腸から上行結腸下部にかけ後壁からの壁外性の隆起がみられた。虫垂入口部は盲腸内腔が狭小化して観察不可能であったが,その肛門側に腫瘍の一部が露出しており,同部の組織学的検査で粘液産生性の腺癌の診断となった。CT,超音波,血管造影検査で腫瘍の腸管壁外での囊胞状発育が示唆され,囊胞型の虫垂癌の診断のもとに右半結腸切除術を施行した。術中所見では肝転移,腹腔内転移,リンパ節転移は認めず,摘出標本では虫垂からの囊胞状腫瘍の発生が認められ,盲腸,上行結腸に壁外性の浸潤を示し,腫瘍の一部は上行結腸内へ露出していた。囊胞状腫瘍は粘液が充満していた。
  • 木幡 義彰, 宮原 健夫, 清水 直樹, 渡辺 浩一, 内山 和郎, 井川 守仁, 篠原 靖, 白鳥 泰正, 窪田 良彦, 竹下 俊隆, 宮 ...
    1993 年 43 巻 p. 211-214
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例1は51歳男性。腹痛を主訴に入院した。腹部X線検査にて横行結腸と思われる部位に針様陰影を認め,停滞したため大腸内視鏡検査を施行し,生検鉗子を用いて横行結腸より縫い針を摘出した。症例2は61歳女性。義歯誤飲にて受診した。腹部X線検査にて上行結腸に異物を認め,大腸内視鏡検査を施行し,生検鉗子およびポリペクトミー用スネアを用いて義歯を摘出した。症例3は59歳男性。自慰行為にて肛門から挿入したバイブレーターが抜去困難となり受診した。大腸内視鏡検査を施行し,スネアを用いて摘出した。3例とも摘出による合併症の出現はなかった。異物は時に消化管穿孔や出血などをひき起こし,外科的処置が必要となる場合がある。内視鏡的異物摘出は上部消化管においては普及しているが,下部消化管ではまれである。大腸異物の内視鏡的摘出は安全かつ有用な手技であると考えられた。
  • 矢作 和也, 金子 香里, 松本 達彦, 増田 淳, 橋本 良明, 松本 純一, 荒井 泰道
    1993 年 43 巻 p. 215-217
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は50歳女性。下血を主訴に来院し,即日行った大腸内視鏡検査にて,S状結腸深部に白色半透明の膜様の剥離粘膜に被われた血腫がポリープ状に認められた。また,塩酸チクロピジン服用によると思われる出血時間の延長を認めた。4日後,剥離粘膜に被われた血腫の排泄があり,その直後に行った注腸X線検査,内視鏡検査にてS状結腸深部に約10cmにわたる全周性の潰瘍を認めた。成分栄養療法などを行い,約10ヵ月後ほとんど狭窄を残さずに治癒した。大腸の全周性粘膜剥離はまれであり,その原因の1つとして虚血性腸炎があげられているが,本例は発症時に腹痛がなく,また剥離部に隣接した粘膜には炎症所見がみられなかったことなどより,虚血性腸炎の可能性は低い。むしろ,塩酸チクロピジンによる出血傾向との関連の可能性が考えられた。興味ある症例と思われたので,若干の文献的考察を加え報告した。
  • 藤田 昌明, 大井 通正, 古高 和生, 水嶋 潔, 高橋 泰行
    1993 年 43 巻 p. 218-220
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は68歳の男性。尿路感染症にてオフロキサシン(300mg/日)を内服したが,投与10日目頃より腹痛,下痢,発熱などの症状がみられ,12日目に入院した。同日行った内視鏡検査にて偽膜性大腸炎と診断した。オフロキサシンの中止とともに,バンコマイシン(1,000mg/日)の内服を開始した。症状は速やかに軽快し,バンコマイシン投与5日後の内視鏡検査にて偽膜の消失を確認した。オフロキサシンによる偽膜性大腸炎の報告は,自験例を含め6例であった。オフロキサシンなどのニューキノロン系抗菌剤による偽膜性大腸炎の報告が増加しており,注意を要すると思われた。
  • 中島 俊一, 石井 俊也, 松村 修志, 井上 博和, 石塚 俊一郎, 小沢 政成, 坂井 謙一, 岸 秀幸, 長谷川 毅, 五十嵐 良典, ...
    1993 年 43 巻 p. 221-223
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は79歳女性。平成2年7月に子宮頸癌のため放射線治療を受けた。平成4年11月頃より時々血便が出現するようになった。平成5年2月心不全の悪化のため入院したが,血便が持続するため大腸内視鏡を施行したところ,S状結腸中部の肛側には放射線治療が原因と思われる血管透過性の減少した粘膜を連続性に認め,またS状結腸中部と直腸中部に出血点をもつ潰瘍を認めた。潰瘍からの出血は浸出性であったが,持続性であった。無水エタノールの局注を選択し,止血しえた。
  • 馬場 俊之, 秋田 泰, 井上 徹也, 山田 浩隆, 西田 均, 吉川 望海, 三田村 圭二
    1993 年 43 巻 p. 224-226
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は66歳女性。腹痛,粘血便を主訴に来院し,腹膜刺激症状と炎症所見を認め,入院となった。入院時の注腸X線検査では,S状結腸に淡いバリウム斑を伴う辺縁不整な狭窄像を認め,大腸内視鏡検査でも同部位に易出血性の地図状潰瘍を伴った狭窄が認められた。虚血性腸炎とびまん浸潤型大腸癌の鑑別に苦慮したが,層構造の状態を把握することにより両者の鑑別が可能と考え,大腸超音波内視鏡検査を施行した。病変部の腸管壁は全層性に肥厚し,第1層-4層にかけて低エコー化していたが,層構造は保たれていた。生検所見でも悪性細胞は認められず,びまん浸潤型大腸癌は否定的であり,虚血性腸炎と診断した。大腸超音波内視鏡検査は腸管壁内外の状態の描出が可能であるが,層構造の変化を観察することは腸管の狭窄病変の良性悪性の鑑別に有用であると考えられた。
  • 田口 忠男, 宮本 俊明, 石原 武, 江畑 稔樹, 岩間 章介, 石原 運雄, 今野 暁男
    1993 年 43 巻 p. 227-230
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     患者は41歳女性。19年前より全身性エリテマトーデス(SLE)と診断され,ステロイド剤での維持療法中に下痢・下血が出現した。大腸内視鏡検査でS状結腸に,中心部は全周性,辺縁部は帯状の長軸方向に長い巨大な潰瘍を認めた。入院してステロイド剤を増量治療1ヵ月後,病変中央部は一段と深い穿通様の潰瘍へと増悪していたが,5ヵ月後にはひだ集中を残して瘢痕化し,その後の再発を認めていない。本症の潰瘍病変は組織学的な確診は得られていないが,免疫学的にはSLEの増悪期の発症で,ステロイド剤増量が有効であったことより,その成因として血管炎の関与が示唆された。
  • 立川 裕理, 琴寄 誠, 辰口 篤志, 名知 志子, 佐藤 順, 藤森 俊二, 南 定, 山門 進, 田口 克司, 玉川 恭士, 田口 文彦 ...
    1993 年 43 巻 p. 231-233
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は66歳女性。右下腹部痛,持続する微熱を主訴として当科を受診した。注腸造影検査で回盲部結核および盲腸の小隆起性病変を指摘され,精査加療目的で入院した。大腸内視鏡検査では回腸末端部の潰瘍と狭窄,回盲弁の変形,上行結腸から盲腸にかけて小潰瘍が認められた。盲腸には約1cm大の粘膜下腫瘍様病変があり,内視鏡的ポリペクトミーを行った。病理組織学的所見では,粘膜下層にLanghans巨細胞および乾酪壊死が存在し,腸結核による粘膜下腫瘍様病変と診断した。腸結核病変部に炎症性ポリープが認められることはあるが,粘膜下腫瘍様病変が存在し,その内視鏡的ポリペクトミーにより腸結核の確定診断ができた例はまれと考え報告した。
  • 山脇 清一, 安達 献, 野村 寿和, 中村 陽子, 橋本 哲, 嶋津 裕, 清水 茂, 石川 主税, 井出 哲, 渡部 幸夫, 安部 明郎 ...
    1993 年 43 巻 p. 234-237
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は50歳女性。下痢と発熱を主訴に入院。既往歴は8年前,陰部潰瘍,結節性紅斑。発熱時,アスピリンおよびジクロフェナクナトリウム坐薬しばしば使用。入院時,口腔内潰瘍,顔面の痤瘡様皮疹,上肢関節痛および腹部全体に圧痛を認めた。検査所見,赤沈の亢進,CRPの高値と高度の炎症反応と汎血球減少を認めた。HLA B51(5)陽性,好中球活性酸素産生能は亢進状態であったが,血清アメーバ抗体や薬剤リンパ球刺激試験(以下DLST)は陰性であった。大腸内視鏡検査では直腸から回腸末端まで,直径2-5cm大の周囲に紅暈を伴う黄白色の苔を有する打抜き潰瘍の多発を認めた。薬剤性腸炎や感染性腸炎との鑑別が問題となるが,上記所見より不完全腸型Behçet病と診断され,栄養療法のみで病態の改善を認めた。腸型Behçet病で,全大腸と小腸に潰瘍がびまん性に多発した例は本邦では極めてまれであり,Behçet病の病態を考える上で示唆多き症例と考える。
  • 中島 昌人, 片山 麻子, 井川 守仁, 田口 夕美子, 堀口 潤, 勝亦 重弘, 堀向 文憲, 竹下 俊隆, 宮岡 正明, 斎藤 利彦
    1993 年 43 巻 p. 238-241
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は31歳男性。1988年9月より骨髄異形成症候群にて当院血液内科に入院中,発熱および背部の皮疹を認め,皮膚生検の結果Sweet病と診断された。1989年10月Sweet病増悪のため再入院したが,入院中の1990年1月17日大量下血のため当科を受診した。大腸内視鏡検査にて盲腸部を中心に多発性の打ち抜き様潰瘍を認め,生検組織で非特異性の炎症所見であった。完全静脈栄養法および塩酸アゼラスチン投与にて軽快した。Sweet病に合併したベーチェット病類似の大腸の多発性潰瘍はまれと思われたので報告する。
  • 大石 温子, 芹澤 宏, 濱田 慶城, 岩渕 直人, 熊谷 直樹, 土本 寛二, 山田 好則, 倉持 茂, 三浦 総一郎, 日比 紀文, 土 ...
    1993 年 43 巻 p. 242-246
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は68歳女性。数年来の眼球乾燥感および断続的な血便にて入院した。Schirmer's test,Rosebengal test,唾液腺造影,口唇生検よりSjögren症候群と確診,ツ反陰性,血清免疫グロブリン高値,末梢血リンパ球CD4/CD8低下など免疫異常所見がみられた。注腸検査では直腸に散在した小透亮像がみられ,大腸内視鏡検査では直腸に1mm以下の小びらんが散在していた。組織学的には,著明な炎症細胞浸潤,間質の浮腫を伴ったびらんが確認された。対症療法のみで症状は改善し,6ヵ月後の内視鏡再検査ではびらんは消失していた。色素散布では小陥凹がみられ,組織学的に慢性炎症細胞浸潤とともにリンパ濾胞形成が認められた。腸粘膜の免疫組織化学的検討でリンパ球のCD4/CD8低下,IgA含有細胞増加がみられた。本症候群での大腸病変の報告は極めてまれで,局所免疫異常を伴った興味深い症例と考えられた。
  • 中島 昌人, 五頭 三秀, 片山 麻子, 佐々木 敬典, 土屋 和彦, 杉浦 弘和, 須藤 一郎, 田口 夕美子, 堀口 潤, 勝亦 重弘, ...
    1993 年 43 巻 p. 247-250
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     大腸神経原性腫瘍の2例を内視鏡で切除しえたので報告する。症例1 : 41歳男性。排便後の出血を主訴に行った大腸X線検査にてポリープを指摘され,大腸内視鏡検査を施行した。横行結腸左側に8mmの細長い隆起性病変を認め,内視鏡的にポリペクトミーした。組織は明るい胞体を伴った紡錘形細胞が直線または曲線状に柵状配列を示し,S-100蛋白,NSE陽性,vimentin陰性に染色され,神経鞘腫と診断された。症例2 : 56歳女性。特発性血小板減少性紫斑病および高血圧の診断で通院中,血便を認めたため大腸内視鏡検査を施行し,虚血性大腸炎と診断された。第40日病日の再検査では虚血性変化は軽快していたが,S状結腸に6mmの隆起性病変を認め,内視鏡的にポリペクトミーした。組織は神経線維束の増生と神経節細胞を認め,S-100蛋白,NSE陽性,vimentin陰性に染色され,神経節細胞腫と診断された。大腸に原発する神経原性腫瘍の内視鏡的切除例はまれであるので,文献的考察を加えて報告する。
  • 平原 美孝, 高橋 秀理, 鶴井 光治, 堀向 文憲, 月岡 健雄, 片山 信仁, 福永 淳, 笹川 道三, 五十嵐 誠治, 井村 穣二, ...
    1993 年 43 巻 p. 251-254
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は51歳女性。集団検診で便潜血陽性を指摘され当センターを受診した。注腸検査で横行結腸に7mm大の山田Ⅲ型の隆起性病変を認めた。大腸内視鏡では病変は2/3を白苔様物質で覆われ,頸部に発赤した部分を認めた。再検時内視鏡では,病変は隆起のほぼ全体が白苔様物質に包まれ,頂部・頸部にわずかな発赤を認めた。色素内視鏡では,隆起表面のピット構造の消失がみられた。切除標本の組織像では,腫瘍内に小型管腔様構造が密にみられ,毛細血管の密な増生を認め,表層は厚い壊死物質で覆われ,粘膜層はほぼ消失していた。以上より毛細血管腫の病理診断が得られた。大腸血管腫の本邦報告は1992年までに57例とまれな疾患である。本例は,retrospectiveには隆起頸部の内視鏡所見より血管腫も考慮の余地があったと考えられたが,隆起全体が白苔で覆われていたため術前の内視鏡診断が困難であった。
  • 石戸 浩之, 井上 冬彦, 杉坂 宏明, 松井 隆明, 松藤 民子, 成宮 徳親, 永山 和男, 田中 照二, 鈴木 克契, 小沢 靖, 石 ...
    1993 年 43 巻 p. 255-258
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は41歳男性。腹痛精査のために行った大腸内視鏡検査にて,陥凹を伴う微小表面型腫瘍がS状結腸に4病変,横行結腸に1病変認められた。さらに12ヵ月後の経過観察時に横行結腸に1病変が認められた。内視鏡,実体顕微鏡,ルーペ像および組織像を総合した形態診断ではⅡc 2病変,Ⅱc+Ⅱa 1病変,Ⅱa+Ⅱc 2病変で,他の1病変は辺縁隆起が非腫瘍の相対的陥凹性病変で,当科分類の(Ⅱa+Ⅱc)′であった。大きさは2-5mmで,組織学的には1病変はm癌,他の5病変は中等度もしくは高度異型腺腫であった。過去3年間に経験した陥凹を伴う微小表面型大腸腫瘍は42症例60病変で,内訳は単発31例,多発11例であったが,その中で本例は最多の病変を有していた。60病変中癌は21病変(35.0%)で,癌の比率が高かった。陥凹を伴う微小表面型腫瘍は多発する傾向があり,癌の比率が高いことを念頭におく必要があると考えられた。
  • 平間 才智生, 小林 清典, 本多 新, 渡辺 義郎, 一原 亮, 渡辺 浄, 山田 伸夫, 長谷川 章雄
    1993 年 43 巻 p. 259-262
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     症例は63歳女性。1991年12月の検診で便潜血反応陽性を指摘され,当院を受診した。注腸造影および大腸内視鏡所見にて,上行結腸から下行結腸にかけて6ヵ所に,最大で長径55mmの結節集簇様病変が認められた。いずれの病変も丈の低い平盤状隆起であり,表面が扁平な小結節集簇様の外観を呈していた。通常内視鏡では,病変部は血管網が途絶し,軽度の発赤および微細な凹凸を呈する粘膜面として観察され,色素内視鏡が表面性状の同定に有用であった。横行結腸の長径17mmの病変をstrip biopsyにより切除したが,病理組織学的診断は腺管腺腫であった。他部位の病変は生検のみを施行し,同様に腺管腺腫であった。癌巣の共存も否定できず外科手術を勧めたが,患者の承諾が得られず経過観察中である。6ヵ月後の注腸造影および大腸内視鏡所見では,腫瘍は明らかな発育・増大傾向は認めていない。多発した結節集簇様大腸病変の報告はまれであり,文献的考察を加え報告した。
  • 為我井 芳郎, 佐藤 薫隆, 森越 栄太
    1993 年 43 巻 p. 263-266
    発行日: 1993/12/01
    公開日: 2015/07/15
    ジャーナル フリー
     大腸無茎性病変で,内視鏡的に一括切除可能な大きさについてはいまだ定説はない。今回,strip biopsyにより一括切除しえた大きさ25mmの結節集簇型sm癌の1例を経験したので報告する。症例は65歳男性。1992年6月当院心臓科にて貧血を指摘され,注腸X線検査を施行した。盲腸2型進行癌および脾彎曲部の隆起性病変を指摘され,7月1日に当科に入院した。7月13日,2回目の大腸内視鏡検査にて脾彎曲部の結節集簇型病変をstrip biopsyにて一括切除した。切除標本の実体顕微鏡的観察では,病変は25×19mm,表面に脳回転様紋様を有する結節集簇型病変で,Ⅳ+ⅢL型のpit pattern(工藤の分類)を認めた。病理組織学的検索では,smにわずかに浸潤した高分化型腺癌であった。以上から盲腸2型進行癌に対して定型的手術を行うことができ,過大な結腸切除を回避しえた。またⅡaないし結節集簇型では,条件が揃えば最大30mmまで粘膜切除可能と思われた。
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