消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
胃平滑筋肉腫に対する新しい治療法としての腹腔鏡下胃局所切除術
大谷 吉秀大上 正裕吉田 昌久保田 哲朗熊井 浩一郎北島 政樹
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1995 年 47 巻 p. 60-63

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抄録

 胃粘膜下腫瘍のなかで,頻度の高い悪性腫瘍である平滑筋肉腫に対する腹腔鏡下手術の適応と方法について述べる。教室における胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下胃局所切除術の適応は,①腫瘍径2から5cmで,噴門もしくは幽門輪にかからない,②腫瘍の増大傾向を認め,悪性腫瘍が疑われる。なお,組織学的診断が確定している場合はそれぞれの治療方針に従うとしている。手術は腹腔鏡下に,2本の鉗子で腫瘍近傍の胃壁を把持挙上して,自動縫合器を用いてsurgical marginを十分確保して楔状切除を行った。これまで7例の平滑筋肉腫に本法を施行した。全例手術翌日から経口摂取を開始し,術後5から7日で退院した。胃筋原性腫瘍の特徴として,病理組織学的診断が得にくいこと,内視鏡による切除が困難なこと,良性腫瘍の可能性もあり侵襲の大きい開腹手術の決断が下されにくいこと,などがあげられる。そのような観点から,われわれの試みている腹腔鏡下胃局所切除術は,開腹手術に比べ低侵襲性で,安全,確実であり,症例を選択することによって平滑筋肉腫に対して有用な治療法となりうる。

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© 1995 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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