消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
大腸sm癌リンパ節転移例・再発例からみた治療法の検討
村瀬 尚哉岡部 聡新井 健広丸山 祥司多田 雅典谷畑 英一井上 晴洋遠藤 光夫
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1996 年 48 巻 p. 71-74

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抄録
 当科では大腸sm癌の粘膜下層での組織学的特徴,および間質内浸潤度を細かく評価し,リンパ節転移・再発のリスクファクターを探るべく検討を行ってきた。高分化型腺癌のうち,一部の中・低分化型の混在するものを混在型として,高分化型のみからなる単純型と区別した。粘膜下層癌巣最浸潤部で癌細胞が間質内へ散在性に浸潤する所見をsingle cell infiltration(SCI),粘液結節形成をmucinous component(MUC)とした。間質内浸潤量の評価は粘膜筋板上縁より深層の癌浸潤量が重要と考え,垂直距離をsm depth,水平距離をsm widthとして計測し,Grade-1-3に分類した。大腸sm癌96症例(リンパ節転移・再発陽性例11例)について検討を行った結果,転移・再発例は,占拠部位では直腸に,肉眼型ではⅠs,Ⅰsp,Ⅱa+Ⅱcに多く認めた。リスクファクターでは,脈管侵襲とSCIが転移・再発と有意の相関を示した。転移・再発例は,全例間質内浸潤度がGrade-3(depth>1000µm,width>4 mm)に分類された。当科では,これらのリスクファクターを十分に評価するために,明らかに内視鏡下の根治的摘除が不能な病変を除いて,内視鏡的摘除を行い病理学的検索の後治療方針を決定している。今回の検討の結果,SCIまたは脈管侵襲陽性,Grade-3,中・低分化腺癌成分を含む大腸sm癌は追加腸切除の適応であると考えられた。
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© 1996 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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