抄録
2011年3月に発生した東日本大震災では,様々な分野で想定を超える甚大な被害が発生し,日本における社会基盤が決して盤石ではないことを露呈した.情報通信分野でも,震災直後には電話やインターネット等のICTサービスが,長時間,利用不能もしくは大幅な機能低下に陥るなど混乱した.未曽有の大規模災害によって顕在化した既存基盤の脆弱性から何を学び,どのような技術・サービスを創出して後世に残していくかがいま問われている.本稿では,東日本大震災によって顕在化したICT基盤に関わる事象,課題を俯瞰し,その解決に向けたICT基盤のあり方に関する一つの方向性を示すとともに具体的な取り組み事例を述べる.