1996 年 49 巻 p. 115-117
生検にて胃顆粒細胞腫と診断し,内視鏡的粘膜切除術にて治療した1例を経験したので報告する。症例は39歳男性。検診の内視鏡検査にて胃体下部大彎に,直径約7mm大,山田Ⅰ型で表面が正常上皮で被われた,やや黄白色調の胃粘膜下腫瘍が指摘された。生検組織の免疫染色などから顆粒細胞腫と診断され,内視鏡的粘膜切除術を施行した。切除標本では,6×5×2mmの灰白色の充実性腫瘤が粘膜下層を中心に存在し,一部粘膜筋板を超え粘膜固有層まで侵入していた。粘膜下層の神経にそって腫瘍細胞の進展が確認されたが,切除断端,深部断端ともに腫瘍細胞を認めなかった。本症の本邦報告例10例の検討では,8例が胃体部に存在し,大きさ10mm程度で,内視鏡的に色調は淡黄色-黄白色調であった。本症を疑診された場合には,生検で診断しえなかった場合でも,全生検目的に内視鏡的粘膜切除術を施行すべきと考えた。