抄録
症例は48歳,女性。約1週間続く嚥下時胸痛を主訴に1997年8月4日来院し,上部消化管内視鏡検査を施行した。中部食道に中心が浅く陥凹し,周堤が軽度隆起した潰瘍を認め,入院した。この時下痢,血便は認めなかった。組織学的には特異的所見なく,原因不明の食道潰瘍と考え,保存的治療により改善した。第4病日に退院後は治療を中断していた。1997年10月下旬より嚥下時胸痛と発熱が再び出現したため,同年10月30日再受診し,内視鏡にて前回同様の食道潰瘍を認めたため,第2回目の入院をした。入院後,下血したため大腸内視鏡検査を施行した。全結腸に粘膜の浮腫と出血を認めた。中心静脈栄養,ステロイド投与により食道,大腸ともに潰瘍は改善し,その後は成分栄養療法で再燃なく経過している。臨床経過,各種検査結果より食道,大腸クローン病と診断した。食道病変を合併したクローン病の報告はまれであり,若干の文献的考察を加え報告した。