抄録
症例は74歳,男性。めまい感と1日10行の水様性下痢のため,精査加療目的にて当科受診した。入院時生化学的検査で,低カリウム血症を認めた。注腸検査,大腸内視鏡検査で,肛門縁より7cm口側に全周性の絨毛状隆起性病変を認めた。さらに腫瘍は柔らかく,大腸内視鏡は口側に挿入可能であった。手術所見ではS状結腸が直腸内に重積しており,用手的帰納が可能で,先進部はS状結腸の絨毛腫瘍であった。S状結腸部分切除を施行した。摘出標本でS状結腸に最大径12cmの絨毛腫瘍を認めた。臨床経過中にelectrolyte depletion syndromeを伴い,さらに成人腸重積症を合併した文献検索上殊にまれな大腸絨毛腫瘍の1例を経験し,大腸絨毛腫瘍の治療において,術前の電解質異常に,また腸重積症の合併に注意を払うことが大切と考えられたので報告する。