消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
sm胃癌に対する腹腔鏡補助下幽門側胃切除の検討―切除標本からみた適応の拡大―
井原 朗田中 一郎重田 博小森山 広幸生沢 啓芳金杉 和夫萩原 優品川 俊人
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1999 年 54 巻 p. 52-56

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抄録

 従来,胃癌の治療法は根治性を重視し,広範なリンパ節郭清を伴う画一的な外科治療が選択されてきた。近年,リンパ節郭清を必要としない早期胃癌では,内視鏡的粘膜切除術や腹腔鏡下胃局所切除術が普及してきている。しかし,sm浸潤を認める早期胃癌ではリンパ節転移の危険性があり,その治療方針の選択には細心の注意が必要と考える。今回,われわれは1987年から1997年の当施設における早期胃癌手術標本を病理組織学的に検索し,リンパ節郭清を必要とする早期胃癌に対しての治療法選択について検討した。早期胃癌200例(m癌100例,sm癌100例)を病変の大きさ,組織型,深達度,潰瘍の有無,リンパ節転移の有無について検討した。その結果,sm1であれば潰瘍の有無にかかわらずリンパ節転移はなく,郭清にとらわれない腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(D1郭清まで)の適応である。sm2であっても潰瘍非合併例では分化型で4cm,未分化型で1.5cmまでは,同様の術式の適応と考える。それ以外のsm2は腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(D1+#7郭清)を行うなど,腹腔鏡補助下手術の適応拡大の可能性が示唆された。sm3では従来どうりの開腹下胃切除術(D2郭清)の適応と考えている。

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© 1999 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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