消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
ICG静脈内投与を併用した半導体レーザー食道静脈瘤地固め治療
中村 直子林 琢也荒井 恒憲菊地 眞田中 正彦永尾 重昭伊藤 和郎三浦 総一郎日野 昌力増田 勝紀鈴木 博昭
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1999 年 55 巻 2 号 p. 25-29

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抄録

 硬化剤の血管外注入による内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS)は,壁の荒廃つまり線維組織への置換を目的としており,残存小血管への効果は二次的である。われわれは粘膜下組織の2mm程度の小血管を直接的作用により血栓化する方法が地固め治療として合理的と考え,レーザー照射法を検討した。しかし従来のレーザー照射では血管の完全血栓化は困難なため,半導体レーザー光の発振波長(805nm)に吸収極大をもつインドシアニングリーン(ICG)を静注しレーザーの効果を増強させる方法を考案した。成犬食道を用いた実験では,0.5mg/kgのICGを30秒で静注後に同量を15分で点滴投与しながら,出力25W,1回照射時間0.2秒の繰り返しパルス照射を行った。急性期には粘膜下層の線維成分の広範な融解壊死像が見られたが,固有筋層にはほぼ傷害がなかった。小血管の血栓化は明らかでなかったが,1週間後には粘膜下層は線維組織で完全に置換されていた。また静脈瘤患者4名に,EISや静脈瘤結紮術(EVL)で太い静脈瘤血管を処置後に上記の方法でレーザー照射した。1~2回の照射で残存小血管は消失し,5ヵ月後でも再発を認めていない。治療中の疼痛や出血穿孔等の合併症もなかった。本法では急性期の血栓化は証明しえなかったが,EISやEVLで大血管処置後の残存小血管に対する安全で効果的な治療法となる可能性が示唆された。今後はICG投与量増加等によりさらに効果的になると考える。

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© 1999 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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