1999 年 55 巻 2 号 p. 51-54
症例は41歳,男性。29歳時発熱,関節痛,皮膚硬結,舌の潰瘍にて発症し,皮膚生検にて結節性多発性動脈炎(PN)と診断された。ステロイド内服治療開始2ヵ月後に,虫垂炎の診断で開腹した際に回腸末端炎を指摘された。術後,一時的にステロイドを増量したが,漸減後全身症状,腹部症状ともになく経過していた。平成10年1月腹痛,血便出現,大腸内視鏡で終末回腸に1/2周性の潰瘍があり,生検では慢性炎症性細胞浸潤と壊死物質のみで,PNによる潰瘍と診断,ステロイドのパルス療法とエンドキサンを点滴静注した。症状は軽快し退院したが,ステロイド減量中にふたたび血便と腹痛が出現し,内視鏡にて前回と同部位に潰瘍が再燃,ステロイドを増量し潰瘍は改善した。PNの回腸病変の報告は散見されるが,多くは手術や剖検により診断されており,内視鏡的に経過を追えた例はきわめて少なく,単純性潰瘍等の疾患との鑑別も重要なことから考察を加えて報告した。