1999 年 55 巻 2 号 p. 48-50
症例は58歳,男性。他院にて膵頭部腫瘍を疑われ,経鼻胆管ドレナージ(ENBD)を留置し,当科転院となる。前医での十二指腸乳頭部内視鏡所見は軽度の腫大のみであったが,19日後の内視鏡で発赤,腫大が著明となり大きく変化していた。諸精査にて十二指腸乳頭部癌と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した。摘出標本の割面像では腫瘍の主座は乳頭膨大部にあり,病理組織学的所見では共通管または乳頭部膵胆管発生の乳頭部癌と考えられた。乳頭部癌は膵頭部領域癌のなかでは比較的予後が期待される腫瘍であるが,これまでの報告によると,十二指腸粘膜から発生したものは浸潤傾向が少なく予後良好であるが,共通管,膵胆管発生のものは浸潤傾向が強く,予後不良と考えられている。本症例は後者のタイプのもので,このために短期間の内に内視鏡像が変化したものと考えられた。