消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
各種膵疾患における内視鏡的に採取した膵液および十二指腸液中のK-ras癌遺伝子変異の検索
神澤 輝実江川 直人榊 信廣石渡 淳一山口 敏和
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 57 巻 2 号 p. 45-49

詳細
抄録

 膵管癌31例,粘液産生膵腫瘍26例,慢性膵炎19例の53例において,ERCP施行時にセクレチンを静注して膵液ないし十二指腸液を採取し,enriched-PCR法とELMA(enzyme linked mini-sequence assay法)を用いて,K-ras癌遺伝子Codon12点突然変異(K-ras遺伝子変異)を検索し,半定量を行った。膵液中のK-ras遺伝子変異(1+以上)は,膵管癌で22例中16例73%,粘液産生膵腫瘍で23例中16例70%,慢性膵炎で15例中6例40%で認められ,膵液中のK-ras遺伝子変異の検索は,膵管癌のhigh risk groupの設定に有用であると考えられる。一方,K-ras変異細胞の半定量値を2+以上とすると,膵管癌では55%,粘液産生膵腫瘍では39%と陽性率は低下するが,慢性膵炎では13%のみであり,膵管癌と慢性膵炎との鑑別に有用であると考えられた。セクレチン静注後に採取した十二指腸液中のK-ras遺伝子変異は,膵管癌で32%,粘液産生膵腫瘍で33%に認められ,膵癌の拾い上げ診断に応用できる可能性が考えられた。

著者関連情報
© 2000 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
前の記事 次の記事
feedback
Top