症例1は87歳,女性。食欲不振を主訴に来院。胃内視鏡にて前庭部にA1 stageの巨大潰瘍を認めた。Helicobacter pylori(H.P)陽性,low-grade胃MALTリンパ腫と診断し,除菌療法を施行した。除菌後巨大潰瘍は瘢痕化し,病変部は褪色調の胃粘膜となり,完全寛解となった。症例2は83歳,男性。心窩部痛を主訴に来院。胃内視鏡にて胃体上部~下部の大弯側に多発性潰瘍を認め,H.Pは病理,培養,呼気テスト全てが陰性だったが,生検の結果,low-grade MALTリンパ腫と診断し,除菌療法を施行した。投与後も潰瘍は残存し,完全寛解には至らなかったが内視鏡的には増悪・進展はみられていない。2例とも外来にて経過観察中である。高齢者における胃MALTリンパ腫の治療は,全身状態および内視鏡像を考慮し,除菌療法を試みてよいと考えられた。