消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
症例
B-RTO後に上部消化管の広範な粘膜障害を合併した1例
川島 ルミ子今井 幸紀新井 晋栫 弘太郎真下 由美朝倉 泰柿沼 徹石川 恵子木下 学下地 克典太田 慎一藤原 研司
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2000 年 57 巻 2 号 p. 64-67

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抄録

 81歳,男性。平成7年9月C型肝硬変,肝細胞癌と診断された。平成11年11月29日胃静脈瘤に対して予防的にバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)施行。その翌日より腹水貯留,5日後心窩部痛,黒色便出現。内視鏡検査にて食道炎,多発性出血性胃びらん,多発性十二指腸潰瘍を認めた。絶食とし,PPI投与10日後の内視鏡検査では十二指腸潰瘍はH1 stageまで改善し胃びらん,食道炎は消失した。利尿剤増量にて腹水は減少し退院となった。退院後もPPI服用は継続していた。平成12年1月5日ごろより腹水増量し1月22日入院。その2日後に吐血あり,内視鏡検査にて前回と同様の広範な消化管病変を認めた。本症例における上部消化管粘膜障害は腹水の増加に一致して出現しており,その発症にはB-RTOによる門脈圧の上昇が関与している可能性が考えられた。

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© 2000 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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