2000 年 57 巻 2 号 p. 84-87
症例は81歳,女性。中部胆管癌症例で,高齢のため金属ステントを挿入して退院した。腫瘍のステント内への発育による黄疸で3ケ月後再入院した。温熱・化学・放射線の三者併用療法を施行し,胆管の再疎通を認めた。しかし,胆道出血及び消化管出血を起こし,ショック状態に陥った。緊急血管造影にて下膵十二指腸動脈と右肝動脈における仮性動脈瘤からの出血と診断し,マイクロコイルを用いて塞栓止血した。仮性動脈瘤の形成機序として,動脈瘤が金属ステントを挿入し局所温熱療法を施行した部位に存在することより,三者併用療法により脆弱した胆管壁に金属ステントがくい込み,動脈壁を損傷した可能性が考えられた。金属ステントを挿入した胆道癌症例の消化管出血の原因のひとつとして,肝動脈の仮性動脈瘤からの胆道出血を考慮する必要がある。