ペドロジスト
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三浦半島の火山灰土壌について(前会長山田忍教授退官記念号)
宮沢 数雄
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1967 年 11 巻 1 号 p. 25-32

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抄録

筆者は福島県矢吹ヶ原におけるペドロジスト野外巡検の際,山田忍先生から火山灰堆積層序の区分について御教示をうけ,古期火山抛出物を主体とする本州の火山灰土壌についても,これを注意深く観察すれば,十分異質の材料の区別ができることを知った。古期火山灰の堆積層序については,地形発達史と関連づけた地質学的尺度の区分が行われ,我々土壌学者もこれを吟味することなく借用してきた。しかし土壌構成材料を風積火山灰や立川ロームという総括的な概念でとりあつかっていては,個々の土壌の特徴や成因について充分説明するこはとできないし,また火山灰土壌の系統的な分類もなし得ない。古期火山灰についても特に表層に重点をおいた土壌学的尺度の母材の吟味が必要である。ここに特に土壌学的尺度と断わった理由は,古期火山灰についても,その起源,噴出時期,分布について詳細に調べることは研究の出発点ではあるが,それだけではまだ地質学的手法の域を出ず,さらにこれら各種材料を,土壌生成におよぼす主要な特性にもとついて分類統合せねばならないと考えるからである。ここに報告する三浦半島の火山灰土壌は,上述の点で非常に興味ある材料を提供する土壌である。筆者ははからずも,この五月,山田先生ゆかりの地十勝に研究の場をあたえられ,本州の火山灰土壌の調査・研究からは若干遠ざかることになった。いきおい本報文も今後の問題点を多くのこし,不充分なものであるがあえて大方の御参考に供したい。

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© 1967 日本ペドロジー学会
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