静岡県由比町の第三紀泥岩の丘陵斜面の裾において,Grumusolに類似した土壌を発見した。その形態的特徴として, A/C断面,土性が重埴土,彩度の低い(<1.5)黒灰色を呈し, 40cm以下に鮮明な斑紋をもち,乾くと,第1層は細角塊状構造が,第2層以下には大きな亀裂が入り,大角塊構造が発達するが,湿ると構造は不明瞭となり, plasticなconsistenceを示すことなどが挙げられる。化学的特徴として,土色に比べ全炭素が低く(<4%),リン酸吸収係数も低い(<800)。反応は弱酸性(pH, 6±), CECは極めて高く(>45me),飽和度も高く(>85%),置換性Caが大部分を占め,それに次ぐ置換性Mgと合わせると95%以上になる。粘土分はモンモリロナイト鉱物を主とする。これらは,アメリカのGrumusol,インドのRegur,沖縄の泥灰岩土壌(ジャーガル)と似ているが,やや酸性で遊離の炭酸塩を含まない点と腐植含量がやや多い点が違う。前の点は雨量が多いこと,後の点は草本植生の影響と排水が制限されていることによるものであろう。結局, Grumusolのうちで,Humic gleyあるいはPseudogleyの方に少し寄った位置に分類されると思う。米7次案のtypic grumaquertにもっとも近い。日本のような中緯度の多雨地帯で,このような土壌が産出するのは,特殊な好条件にめぐまれたためと思うが,その条件として,母岩の泥岩にモンモリロナイト鉱物が豊富に含まれること,その膨潤性のため内部排水が制限されること,斜面裾で上方からの塩基の供給があることが挙げられる。
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