抄録
今から15年ほど前,私は本誌(5巻1号, 1961年)に「ダニ学と土壌学の結合」という,当時にしてみればいかにも奇妙な題の一文を寄せた。なぜ奇妙であったかというと,ダニと土壌が一体どう結びつくのか,その頃は理解に苦しむ人が多かったからである。いま読み返してみると,大学院の学生にしては,ずい分と生意気なことを書いたものだが,土壌動物学などという学問分野があることさえ,あまり知られていなかった時だけに,私もパイオニアの一人になったつもりで,ばかに張切っていたらしい。その後の,日本における土壌動物の研究は急速な発展を遂げた。偉そうなことをいっておきながら,結局は土壌中のダニの分類ばかりに私が熱中している間に多くの研究者が現われ,次々に貴重な仕事をしていった。それらの結果を紹介するのに,私が適当であるとは思われないが,一般的に興味のありそうなことや土壌とのかかわりの深いことに焦点をしぼって,この15年間の日本における研究の歩みを記してみたいと思う。