1976 年 20 巻 2 号 p. 128-138
植物の生育,養分の動態に及ぼす水田下層土の役割について試験した結果を要約する。1.裸麦のいわゆる「枯れうれ」現象は登熟期に水分供給が少ない年に砂礫層水田だけに発生した。3.砂礫層水田で下層客入区を併設し,いろいろの作物を栽培した。下層客入区では標準区に比べ麦の養分吸収量,収量が高まった。6種の飼料作物の乾物量は下層客入区のものが標準区に比べ程度の差はあったが,ほとんど増加した。3.硬質ビニール製のモデル水田で水稲を栽培した。(1)山口農試水田作土では下層土があると生育,養分吸収量は高まった。(2)佐賀農試水田作土では下層土があっても生育,養分吸収には余り変化が認められなかった。(3)湛水期間中,山口土壌から浸出された成分は,佐賀土壌からのものより,下層土にとどまる割合が小さかった。(4)モデル水田の下層土では湛水期間中,しだいに還元状態が発達した。