ペドロジスト
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愛知県東北部の林野土壌の火山ガラス
新井 重光大島 俊文熊田 恭一
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1984 年 28 巻 2 号 p. 98-107

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抄録

東海地方の黒ボク土壌の生成機構の解明に資することを目的として,愛知県東北部の林野土壌(黒色土および褐色森林土)について,火山ガラスの含量と屈折率および理化学性を測定した。(1)供試土壌のすべてに,多少とも火山ガラスが見出された。この火山ガラスは,屈折率より,姶良Tnまたはアカホヤ火山ガラス,または両者であると推定された。(2)A層の全炭素含量は19〜6%で,黒色土と褐色森林土間の差はなかったが,C/N比は黒色土では20以上,褐色森林土では20以下であった。(3)すべての試料は強い酸性を示し,pH (H_2O)≤5.0, pH (KCl)≤4.2,置換酸度Y_1は9〜65で,黒色土と褐色森林土間の差ぱ認められなかった。(4)りん酸吸収係数は,黒色土ではおおむね1300〜1900,褐色森林土では14点の試料中1300以上のものが7点みられた。(5)段戸4以外の,すべての土壌で,pH (NaF)≥9.4の層が含まれていた。(6)アロフェンテストでは,黒色土の2断面と褐色森林土の2断面で鮮明な赤変が示された。(7)すべての黒色土のA層と褐色森林土の埋没腐植層(1例)とB層(1例)で,A腐型核酸が認められた。(8)以上の結果から,当該地域の山地にかつて火山灰が降下し,ひろく黒色土が生成したのち,それらが侵食を受けた部分に褐色森林土が発達し,侵食から保護されあるいは再堆積した部分に黒色土が残ったものと推論した。

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© 1984 日本ペドロジー学会
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