ペドロジスト
Online ISSN : 2189-7336
Print ISSN : 0031-4064
エコロジー緑化工法造成林における植生と土壌の経年変化 : 第2報 土壌の経年変化
鈴木 創三千代延 尚子青池 真也小舘 誓治井汲 芳夫高橋 竹彦藤嶽 暢英大塚 紘雄
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 42 巻 1 号 p. 33-43

詳細
抄録

り造成された,植栽後1年(ZR),11年(TN),18年(TW)経過した造成林と対照としての自然林(NF)において,植生の経年変化,土壌の経年変化,および植生と土壌の関係を調べた。一連の調査により次のことを明らかにした。1)造成林の3地点の土壌は礫の多いSLまたはLSの土性で,花崗岩質の真砂土の母材の特性を反映したものと推察した。また,O層およびA層の厚さ,土色の黒味,根量および緻密度はいずれも経年的に増加していた。2)経年数の長いTWより短いTNの方が容積重は少なく,孔隙量は多い層もあったが,容積重および孔隙量については経年的にそれぞれ減少,増加する傾向が認められ,植物根と土壌構造が発達したためと考察した。3)pHは造成当初の弱アルカリ性から経年的に酸性側に低下した。造成林ではCaとMgが自然林より著しく多く,陽イオン飽和度は100%以上で,pHは中〜微アルカリ性を示した。これは,造成時に混入された肥料由来のCaとMgが集積しているためと推察した。4)全炭素含量,全窒素含量および陽イオン交換容量は年数と共に増加する傾向を示し,この特徴は吸収根分布層(0〜30cm深)土壌でより明瞭に認められた。5)微生物バイオマスCは年数と共に増加した。栄養源の全炭素含量の増加が関係していると推察した。6)植生と土壌との関係については以下のように考察した。すなわち,造成林では年数と共に植生の階層構造の発達,D^2Hのような植物体の現存量の増加,侵入種による種数の増加が認められ,植物体の現存量の増加に伴って植物遺体のリターの供給が増加し,これらが最終的に土壌中の全炭素含量と全窒素含量を増加させた。このような土壌の全炭素量を増加させるような要因によって陽イオン交換容量と微生物バイオマスCが増加した。7)TWよりTNの方が植物体の現存量が大きかったのは,TNのほうがTWより孔隙量などに由来する水分や空気の保持力が大きかったためと推察した。しかし,そのTNの下層は硬度が大きく,水分や空気の保持力も小さいことが明らかにされ,今後は植物根の伸長がかなり制限されることを予測した。

著者関連情報
© 1998 日本ペドロジー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top